2006年10月-12月

2006/12/22 水溶性ビタミン葉酸の吸収メカニズム

 アメリカ・アルバート・アインシュタイン医科大学の研究者らは水溶性ビタミンである葉酸の吸収に係わるタンパク質(PCFT/HCP1)を発見したと発表した。

 水溶性ビタミンは、小腸の脂溶性の細胞膜を簡単には通過できない。そのため、水溶性ビタミンを吸収する特別なメカニズムがあると考えられていた。

 研究者らは、葉酸分子を小腸の細胞内へ輸送するPCFT/HCP1と名付けた膜タンパク質を特定した。また、PCFT/HCP1の遺伝子変異が遺伝性葉酸吸収不全症の原因となることを示した。

 このタンパク質を持たない幼児は、葉酸の吸収が出来ないために遺伝性葉酸吸収不全症となることから、遺伝子診断による疾病防止に役立つと期待されている。

【文献】
Qiu, A. et al.: Identification of an Intestinal Folate Transporter and the Molecular Basis for Hereditary Folate Malabsorption. Cell 127: 917-928.
(2006)



2006/12/21 仕事で燃え尽きると、2型糖尿病リスクが上がる

 イスラエル・テルアビブ大学の677人中年男性を対象とした調査によると、仕事で燃え尽きた人は2型糖尿病が発症しやすい傾向にあることが分かった。

 仕事で感情的疲労、肉体的疲労、認識的な疲れなどで燃え尽き症候群になった人は2型糖尿病のリスクが1.84倍に高まることが分かった。

【文献】
Melamed, S. et al.: Burnout and Risk of Type 2 Diabetes: A Prospective Study of Apparently Healthy Employed Persons. Psychosom. Med. 68: 863-869. (2006)



2006/12/20 BMIとウエストサイズで糖尿病を予測

 BMIとウエストサイズは、前-糖尿病状態でインシュリン抵抗性の人の心臓病や代謝性異常のリスクを予測出来ることをカリフォルニア・スタンフォード大学の研究グループが明らかにした。

 ボランティア261人を対象に、BMI、ウエストサイズ、コレステロール、中性脂肪、インシュリンなどを測定した結果、BMIかウエストサイズを測定することで糖尿病患者の心臓病リスクを予測できると結論づけた。

【文献】
Helke, M.F. et al.: Comparison of Body Mass Index Versus Waist Circumference With the Metabolic Changes That Increase the Risk of Cardiovascular Disease in Insulin-Resistant Individuals. Amer. J. Cardiol. 98: 1053-1056. (2006)



2006/12/15 赤ワインに含まれるポリフェノールは心臓病のリスクを下げる

 赤ワインの適度な消費は冠状動脈性心臓病のリスクが低いが、特に、赤ワインに含まれているポリフェノールの一種であるプロシアニジンにその活性が強いことが分かったと、イギリスの研究グループが発表した。

 また、フランスの南西地方やイタリアのサルデーニャ島のワインにはこのプロアントシアニジンが多く含まれており、75歳以上の男性の比率が多く長生きする傾向にあった。

【文献】
Corder, R. et al.: Oenology: Red wine procyanidins and vascular health. Nature 444, 566. (2006) [doi: 10.1038/444566a]



2006/12/09 アメリカガン学会によるガン治療後のガイドライン

 アメリカガン学会(ACS)は、科学的な証拠に基づいたガンの治療と回復期の栄養、身体的活動について専門家による評価を行い新ガイドラインを発表した。

 ガンと診断されたあとの最も良い治療は、最適栄養の摂取と運動である。治療後の最適栄養は、アメリカガン学会のガン予防のための栄養摂取基準と原則的には同じである。

 果物摂取は、ガンの進行に影響するビタミン、ミネラル、ファイトケミカル、食物繊維など多数の成分を含んでいるだけでなく、低カロリーで満腹感を促進する食品であることから健康的な体重維持に有効と考えられるとし、積極的な摂取を推奨している。

【文献】
Doyle, C. et al.: Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment: An American Cancer Society Guide for Informed Choices. CA Cancer J. Clin. 56: 323-353. (2006)



2006/12/08 赤味の肉は大腸ガン発症のリスクを高める

 赤身の肉および加工された肉を食べる人は大腸ガン発症のリスクが高いと、スエーデン・カロリンスカ研究所のグループが発表した。

 赤身の肉に関する15の研究と加工された肉に関する14の研究を調べた結果、赤身の肉を食べる人は、結腸・直腸ガン発症のリスクが28%、加工された肉を食べる人は20%上昇することが分かった。また、男性で1日当たり120グラムの赤身肉を食べる人は28%リスクが高かった。また、加工された肉を1日当たり30グラムを食べる人は9%リスクが増加した。

【文献】
Larsson, S. C. and Wolk, A.: Meat consumption and risk of colorectal cancer: A meta-analysis of prospective studies. Inter. J. Cancer. 119: 2657 - 2664. (2006)



2006/12/02 高炭水化物・低GI食で心疾患のリスクと体重の減少

 高炭水化物で低グリセミック・インデックス(GI)の食事は、心疾患発症のリスクを下げ、体重も減少すると、オーストラリア・シドニー大学の研究グループが発表した。

 炭水化物を55%以上摂取する高炭水化物食と、タンパク質を25%以上摂取する高タンパク質食について、炭水化物のGI値が高い時と低い時の4つの食事について、肥満または過体重のヒト129人(18~40歳)を対象に12週間調査を行った。

 その結果、高炭水化物・低GI食と高タンパク質・高GI食で体重の減少が大きかった。また、BMI値が5%以上減少した人の割合は両者とも50%以上であった。

 一方、心疾患発症と関係するLDL-コレステロールでは、高炭水化物・低GI食で統計的に有意に減少していた。しかし、高タンパク質・高GI食では高くなった。

 以上の結果から、研究者らは、高炭水化物・低GI食は、心疾患発症を予防できるだけでなく、体重も減らせることから、体重減少に有効な高タンパク質ダイエット(アトキンス・ダイエット)の必要性はない考えている。

【文献】
McMillan-Price, J. et al.: Comparison of 4 Diets of Varying Glycemic Load on Weight Loss and Cardiovascular Risk Reduction in Overweight and Obese Young Adults: A Randomized Controlled Trial. Arch. Intern. Med. 166: 1466-1475. (2006)



2006/12/01 血液中のビタミンEレベルの高い人は死亡リスクが低い

 50-60才代の喫煙男性29.092人を調査したフィンランド・ヘルシンキで行われた研究によれば、血液中のビタミンEレベルの高い人はガンや心臓病などの死亡リスクが低いことが分かった。

 血液中のビタミンEレベルの高い人は、低い人に比べて死亡率が18%低くかった。また、ガンでは21%、心臓病では19%、その他の疾病では30%低かった。また、最適な血液中のビタミンEのレベルは13-14mg/lと考えられた。

 ビタミンEのサプリメントの摂取では死亡率改善効果が認められていないが、研究者らは、食事からビタミンEを摂取することは有益であると結論づけている。

【文献】
Wright, M. E. et al.: Higher baseline serum concentrations of vitamin E are associated with lower total and cause-specific mortality in the Alpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Study. Amer. J. Clin. Nutr. 84: 1200-1207. (2006)





2006/11/29 心筋梗塞に血中コレステロール値は関係、卵は無関係

 約9万人(男性43,319人、女性47,416人)を対象に心筋梗塞との関係を調べたところ、血液中の総コレステロール値が高いほど、心筋梗塞リスクが高くなっていた。総コレステロール値が180mg/dL未満の人に比べると240mg/dL以上の人の心筋梗塞のリスクは2倍であった。また、卵を「ほとんど毎日食べる」グループが、卵を食べる回数が少ないグループより心筋梗塞のリスクが高いわけではなかった。

 以上の結果より、心筋梗塞予防には、総コレステロールを低く保つことが重要であり、卵以外の動物性脂肪などで総コレステロール値の上昇が起きると考えられる。

【文献】
Nakamura, Y. et al.: Egg consumption, serum total cholesterol concentrations and coronary heart disease incidence: Japan Public Health Center-based prospective study. Br. J. Nutr. 96: 921-928. (2006)



2006/11/28 大腸ガンのリスクは男性の方が高い

 大腸ガンの原因となるポリープは、女性よりも男性に多くみられることをポーランドの研究グループが発表した。

 大腸内視鏡を用いた大腸ガン検診プログラムに参加した40~66歳の被験者50,148人のデータを調べた。そのうち40~49歳の被験者は大腸ガンの家族歴がある人で、他の被験者は平均的リスクの人である。調査の結果、50~66歳では5.9%、40~49歳では3.4%に進行した大腸の病変またはポリープがみられた。また、男性では女性よりも73%多く、統計的に有意であった。

【文献】
Regula, J. et al.: Colonoscopy in Colorectal-Cancer Screening for Detection of Advanced Neoplasia. New Engl. J. Med. 355: 1863-1872. (2006)



2006/11/27 健康長寿の危険因子

 ハワイに住む日系人の中年男性5,820人を40年間追跡調査したところ、冠動脈疾患、脳卒中、ガン、慢性閉塞性呼吸器疾患、パーキンソン病、糖尿病や認知機能障害、0.5マイル歩行不能な身体障害などの危険因子が6つ以上ある人の85才の生存の確率は9%であったのに対して、1つもないグループでは55%であった。

 以上の結果から、中年期の危険因子を出来るだけ多く回避すれば、健康で長生きできると研究者らは述べている。

【文献】
Willcox, B. J. et al.: Midlife risk factors and healthy survival in men. J. Am. Med. Assoc. 296: 2343-2350. (2006)



2006/11/22 睡眠が不足すると体重が増加

 アメリカで女性看護師68,183人を16年間追跡調査したところ、睡眠時間が5時間以下のグループでは、7時間のグループと比べて体重が1.14kg多いことが分かった。また、6時間のグループでは0.71kg多かった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと同程度であった。

 16年間に15kg以上体重が増加した人の割合は、7時間のグループと比べて、5時間以下のグループでは1.28倍、6時間のグループでは1.11倍であった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと差がなかった。

 以上の結果から睡眠不足は体重の増加や肥満に関連すると研究者らは述べている。

【文献】
Patel, S. R. et al.: Association between reduced sleep and weight gain in women. Am. J. Epid. 164: 947-954. (2006)



2006/11/21 丸ごとの果物は子供の体重を減らす

 アメリカ・ペンシルベニア大学の研究から、丸ごとの果物の摂取が多い子供の体重は、そうでない子供と比較して減少していることが分かった。

 また、今までに行われた研究では、果汁の摂取量と子供の体重増加とはリンクしていなかったが、今回の研究では、太り過ぎの傾向のある未就学児の場合、果汁の摂取は体重を増やす傾向が認められた。

 ただし、この結果は果汁の摂取を止めると言うことではなく、適切な量を摂取する必要があることを意味すると研究者らは述べている。

【文献】
Faith, M. S. et al.: Fruit Juice Intake Predicts Increased Adiposity Gain in Children From Low-Income Families: Weight Status-by-Environment Interaction. Pediatrics 118: 2066-2075. (2006) [doi:10.1542/peds.2006-1117]



2006/11/20 糖尿病予防のための生活指導は、終了後も効果

 フィンランドの研究によると、食事や運動に関するカウンセリングによって、2型糖尿病リスクの高い人の生活習慣を改善し、発症率を減らすことができることが明らかになった。

 血糖値の高い糖尿病の予備軍に、生活習慣改善の個別指導を4年間行ったところ、終了から3年後も効果が続き、糖尿病の発生のリスクが36%下がった。

 こうした結果から研究グループは、糖尿病予備軍に対する個別指導は、指導が終わってからも生活習慣の改善効果が持続し、糖尿病の発生率の低下につながると結論している。

【文献】
Lindstrom, J. et al.: Sustained reduction in the incidence of type 2 diabetes by lifestyle intervention: follow-up of the Finnish Diabetes Prevention Study. Lancet 368: 1673-1679. (2006) [DOI: 10.1016/S0140-6736(06)69701-8]



2006/11/19 世界で年間316万人の人が高血糖で死亡

 高血糖は糖尿病、心疾患、脳卒中とリンクしており、世界で年間316万人が死亡していることが、アメリカ・ハーバード大学の研究から分かった。

 世界各地の52カ国の血糖値のデータから最適値を超える血糖が心疾患および脳卒中による死亡に及ぼす影響を調べた。その結果、2001年に高血糖に起因する糖尿病により死亡したのは95万9,000人、同じく高血糖による心疾患および脳卒中による死亡はそれぞれ149万人、70万9,000人であった。これは、心疾患による死亡の21%、脳卒中による死亡の13%が高血糖に起因する。

 高血糖による死亡数316万人は、糖尿病による死亡数を大幅に上回り、喫煙(480万人)、高コレステロール(390万人)、過体重・肥満(240万人)による死亡数に匹敵する。

 そのため、研究者らは高血糖を危険因子(リスクファクター)として捉え、高血圧や高コレステロールと同じように、高血糖リスクを一般に知らせる必要性があるとしている。

【文献】
Danaei, G. et al.: Global and regional mortality from ischaemic heart disease and stroke attributable to higher-than-optimum blood glucose concentration: comparative risk assessment. Lancet 368: 1651-1659. (2006) [DOI:10.1016/S0140-6736(06)69700-6]



2006/11/16 女子学生は体重に対する意識は男子学生と大きく異なる

 女子学生は男子学生よりやせる必要があると考えダイエットしているとアメリカ・ネブラスカ大学の研究チームが報告している。

 研究者らは286人の大学生を調査したところ、男子学生の45.2%は、太りすぎか、肥満体であったが、女子学生は13.9%と少なかった。しかし、痩せる必要があると考えている男子学生は28.6%であったのに対し、女子学生は57.4%と、必要以上に多くが痩せたいと回答していた。

 また、一度もダイエットしたことのない男子学生は79.1%であったが、女子学生は65.6%であった。男子学生も体脂肪に関心を持っているが女子学生ははるかに敏感であった。

 大学生は脂肪、ナトリウムの摂取量が多く果実、野菜の摂取量が少ないなど、その食習慣は悪化の傾向がある。そのため、栄養改善の指導を行う必要があるが、男子学生と女子学生のダイエットに対する意識の違いを考慮した指導を行う必要があると研究者らは述べている。

【文献】
Davy, S. R. et al.: Sex Differences in Dieting Trends, Eating Habits, and Nutrition Beliefs of a Group of Midwestern College Students. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1673-1677. (2006)



2006/11/15 睡眠不足の子供は肥満になりやすい

 イギリス・ブリストル大学の研究から睡眠不足の子供は、肥満になりやすいことが明らかにされた。

 睡眠不足は正常な代謝が阻害され、ホルモンが変化し食事の摂取量が増加する。また、睡眠不足による疲労が運動不足を引き起こす可能性がある。

 摂食の抑制とエネルギー代謝の活性化に強く働きかける飽食因子(抗肥満ホルモン)ホルモンのレプチンが、毎晩8時間就寝する人より5時間の人で約15%低く、逆に、空腹のシグナルとして胃から分泌されるホルモンのグレリンが8時間睡眠の人より5時間の人で約15%多い。

 以上のことから、睡眠と肥満との関係は、食事や運動と同じくらい重要であるとしている。

【文献】
Taheri, S.: The link between short sleep duration and obesity: we should recommend more sleep to prevent obesity. Arch. Dis. Child. 91: 881-884. (2006) [doi: 10.1136/adc.2005.093013]



2006/11/14 サプリメントは心臓病予防に役立たない

 抗酸化成分やビタミンなどのサプリメントを摂取しても心疾患や脳卒中の原因となるを予防できないとアメリカ・ジョーンズホプキンス大学の研究者らが発表した。

 今までに試みられた16の臨床試験の結果を分析した結果、サプリメント(葉酸塩、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンC、β-カロテン、セレニウム)を摂取してもアテローム性動脈硬化の進行を防ぐ効果がないことが分かった。

 この結果は、サプリメントに心疾患などの予防効果がないことを示しているが、食事からのビタミンなど栄養素の摂取を重要性を否定しているわけではないことに注意が必要である。

【文献】
Bleys, J. et al.: Vitamin-mineral supplementation and the progression of
atherosclerosis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am. J. Clin. Nutr. 84: 880-887 (2006)



2006/11/13 アメリカ人は減量のためのサプリメントの”誇大宣伝”を信じている

 アメリカの成人は、減量のためのサプリメントを誤解していることがコネティカット大学の電話による調査から明らかになった。

 調査に応じた1,444人のうち60%以上は減量のためのサプリメントは、FDAによって調査され安全で(65%)で、有効である(63%)と立証されていると誤ってい信じていた。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は減量のためのサプリメントを全く承認していないが、54%以上の人がFDAにより減量のためのサプリメントが承認されていると信じていることがわかった。

下記のサイトで調査の詳細が読める(英文)。
http://www.csra.uconn.edu/pdf/National_Dietary_Survey.pdf



2006/11/12 減量後の体重を維持すには行動計画が必要

 減量した後にその体重を維持するには、リバウンドに備えて行動計画(自己規制プログラム)を立てることが重要であるとアメリカ・ブラウン大学の研究チームが発表した。

 体重を減らすときには、洋服が似合うようになり、体重計の数字は下がり、周りの人が声をかけるなどがあるが、体重維持期に入るとこうしたことが少なくなり、リバウンドしやくなる。

 そこで、米ブラウン大学の研究者らは、過去2年間で以前の体重より最低10%以上を減量した男女314人(平均で19.3kg(20%)減量)を対象にリバウンドに備えるための研究を行った。

 被験者は3群に割り付けられ、「対照群」は、食事や運動習慣について書かれたニュースレターを年4回受けとった。「対面式対応群」は、定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングを直接受けた。「インターネット対応群」は定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングをインターネットで受けた。研究期間の18カ月後、約2.3kg以上体重が増加したのは、対照群で72%、インターネット群で55%、対面対応群では46%だった。

 研究者らは、対面式対応群の成功には、毎日の体重測定だけではなく、体重報告の義務や、行動計画の必要性が関与していると述べている。

【文献】
Rena R. Wing, R. R. et al.: A Self-Regulation Program for Maintenance of Weight Loss. New Engl. J. Med. 355: 1563-1571. (2006)



2006/11/11 スウェーデンのカロリンスカ研究所の砂糖について報告

 スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究グループが、ソフトドリンクなど砂糖をたくさん含む飲み物や食べ物を多く取る人は、そうでない人よりすい臓ガンを発症する危険性が最大約90%高いとする調査結果を報告した。

 この発表の中ですい臓ガンのリスクを高める要因の1つとして「クリームの付いたフルーツ」とある。この料理は、スウェーデンでよく食べられている砂糖を使うスープのようなもののようであるが、まだどんな料理か分かりません。

 ただ、この論文は、「Consumption of sugar and sugar-sweetened foods and the risk of pancreatic cancer in a prospective study. (Am. J. Clin. Nutr. 84:1171. 2006)」で、果物がすい臓ガンと関係していると述べているわけではなく、添加した砂糖についてのデータである。

 また、研究者らが添加した砂糖がすい臓ガンのリスクを高める理由として「血糖値を調整するインスリンを分泌する膵臓のがんと、砂糖の取りすぎによる高血糖とに関連があるのかもしれない」としている。

 果物は単糖類を含むが食物繊維も含まれているので、食べても血糖値を上げず、インシュリンの分泌も上げないことは科学的に明らかになっている。

 一方、カリフォルニア大学の研究グループは果物の摂取はすい臓ガンのリスクを下げると報告している(Vegetable and Fruit Intake and Pancreatic Cancer in a Population-Based Case-Control Study in the San Francisco Bay Area. Cancer Epid. Biomark. Prev. 14:2093. 2005)。従って、果物がすい臓ガンのリスクを高めることはない。



2006/11/08 低GIの食事は、女性の体重増を避けられる

 食物繊維を多く摂取している女性では年齢に伴う体重の増加を避けることが出来るとデンマークの研究者らが発表した。果物や野菜など食物繊維を多く含む食品のグリセミックインデックス値(GI値)は低く、キャンディや白パンなどの食品のGI値は高い。

 男性185人と女性191年を対象に6年間行われた研究では、GI値の低い食事をしていた女性の体重はGI値の高い食事をしていた女性に比べて体脂肪、体重などが低いことが分かった。特に座業的な仕事が多い女性で顕著な違いが認められた。しかし、男性ではこうした傾向は認められなかった。

【文献】
Hare-Bruun, H. et al.: Glycemic index and glycemic load in relation to changes in body weight, body fat distribution, and body composition in adult Danes. Am. J. Clin. Nutr. 84: 871-879. (2006)



2006/11/06 健康情報を探索する人は、情報源をチェックしない

 アメリカのインターネットユーザーの7%(1千万人)がウェブ上で健康について検索しているが、このうち、情報源と日付をチックしているのは4分の1に過ぎない。また、チックしている人のうち15%の人は、定期的に健康情報のソースと日付をチェックしているが、10%の人は時々である。

 その理由として、健康ウェブサイトで情報ソースや日付を提示しているところが2%しかないためと、検索が一般的なサーチエンジンであるGoogleやYahooを使っているためとしている。

 最近、医学の話題だけに焦点を当てたサーチエンジンが利用可能になったので、今後、消費者の行動が変わる可能性があると研究担当者は述べている。

上記調査は下記のサイトで読める。
http://www.pewinternet.org/PPF/r/190/report_display.asp



2006/11/05 メタボリックシンドロームでも血圧が正常なら動脈硬化のリスクは同じ

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、生活習慣病の危険を高め、心臓病や脳卒中を招く動脈硬化につながるとされている。しかし、血圧が正常であれば、メタボリックシンドロームであっても、アロテーム性動脈硬化症(心臓病や脳卒中の主因)のリスクは同じと東京大病院の石坂信和らの研究チームが報告している。

 1994年-2003年に人間ドックを受診した人のうち血圧がやや高めだが正常範囲である(140Hg未満/90Hg未満)の5661人を対象に、メタボリックシンドロームの有無とアロテーム性動脈硬化症のリスクとの関係を調べた。

 その結果、男女とも、同じ血圧でも降圧剤に頼っていない人の動脈硬化のリスクは、メタボリックシンドロームがあってもなくても、変わらなかった。

 以上の結果から、研究者らはメタボリックシンドロームとアロテーム性動脈硬化症とは関係ないのではないかと示唆している。

【文献】
Ishizaka, N. et al.: Metabolic Syndrome May Not Associate With Carotid Plaque in Subjects With Optimal, Normal, or High-Normal Blood Pressure. Hypertension 48: 411 - 417. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000233466.24345.2e]



2006/11/04 シーバックソーン・ベリーから健康成分を高回収

 グミ科のシーバックソーン・ベリーはチベットや中国、ロシアでジュースとして飲まれている。この果汁にはコレステロールを低くする成分などが含まれているが現在の製造工程では回収率が悪いことが知られていた。そこで、インドの研究グループは高圧プレスにる製造方法を開発し、パルプオイル、ジュースを効率よく回収できた。

 パルプオイルにはカロテノイドが4096-4403mg/kg、トコフェロールが1409-1599mg/kgが含まれていた。また、ジュースにはポリフェノールが2392-2821mg/kg、フラボノイドが340-401mg/kg、ビタミンCが1683-1840mg/kg含まれていた。

【文献】
Arimboor, R. et al.: Integrated processing of fresh Indian sea buckthorn (Hippophae rhamnoides) berries and chemical evaluation of products. J. Sci. Food Agr. 86: 2345-2353. (2006) [doi: 10.1002/jsfa.2620]



2006/11/03 レスベラトロール摂取で高カロリー食による寿命短縮防止

 脂肪分が多い高カロリー食を摂取したマウスの寿命は標準食を摂取したマウスに比べて寿命が短くなる。ところがブドウなどに含まれるポリフェノール一種である「レスベラトロール」を、高カロリー食を一緒にマウスに与えると寿命短縮を防ぐ効果があったと、アメリカ・ハーバード大などの研究チームが発表した。

 体重の増加を減らす効果はあまり大きくはなかったが、血糖値やインシュリンの分泌の改善が認められ統計的に有意の寿命の伸びが認められた。マウスに与えられたレスベラトロールの量はキログラム当たり22.4mgなので、ヒト(60kg)に換算すると1.344gとなることから投与量としては多いわけではない。また、今回の論文ではデータが示されていないが5.2mg/kgでも効果があったと記載されているので、この場合をヒトに換算すると312mgとなる。

 以上の結果は、哺乳動物の肥満関連の疾病に対してレスベラトロールのような低分子が効果的であることを示している。

 この研究は、肥満に関連した疾病予防に対する新しいアプローチであることから今後の展開が待たれる。しかし、コレステロールや中性脂肪に変化がないなど解明すべき点も残されているので、人への応用も期待されるがまだ先だろう。

【文献】
Baur, J. A. et al.: Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature Online Nov. 1, (2006) [doi: 10.1038/nature05354]



2006/11/2 積極的な感情は低血圧につながる

 メキシコ系アメリカ人2564人(65歳以上)を対象に積極的な感情と血圧との関係を調べた結果、積極的な感情をもつ人の血圧は、そうでない人と比べて統計的に有意に低いことが分かった。

【文献】
Ostir, G. V. et al.: Hypertension in Older Adults and the Role of Positive Emotions. Psych. Med. 68: 727-733. (2006)



2006/11/01 ω-3脂肪酸とアルツハイマー病との関係

 ω-3脂肪酸のサプリメントを摂ることで、軽いアルツハイマー病患者の認識力低下を遅くするかもしれない。しかし、より進行した症状に対する効果についてはあまり期待できない。

 スウェーデンの研究グループは、ω-3脂肪酸サプリメントと偽薬を使ってアルツハイマー病との関係を比較した。6カ月間、1.7gのドコサヘキサエン酸(DHA)と0.6グラムのエイコサペンタエン酸(EPA)を摂取した89人の患者(女51人、男38人)が1.7グと偽薬を摂取した85人の患者(女39人、男46人)を比較した。そのあとの6カ月間、両グループともω-3脂肪酸を摂取した。

 2つのグループ間には、認知機能低下の速度の違いは全くなかった。しかしながら、偽薬を取った人々と比べて、非常に軽い認識的な損傷の32人の患者では、認識力の低下が遅くなった。

【文献】
Freund-Levi, Y. et al.: ω-3 Fatty Acid Treatment in 174 Patients With Mild to Moderate Alzheimer Disease: OmegAD Study. Arch. Neurol. 63: 1402-1408. (2006)





2006/10/31 地中海ダイエットはアルツハイマー病のリスクを下げる

 アメリカ・ニューヨークで行われた研究によると果物、野菜、オリーブオイルと少量の肉を食べる地中海ダイエットは、アルツハイマー病のリスクが統計的に有意に減少することが分かった。

【文献】
Scarmeas, N. et al.: Mediterranean Diet, Alzheimer Disease, and Vascular Mediation. Arch. Neurol. online Oct. 9, 2006 [doi: 10.1001/archneur.63.12.noc60109]



2006/10/29 クルミはオリーブ油より心臓健康のために良い

 オリーブ油は炎症版のによいことが知られていたが、24人を対象にクルミの効果について調べた結果、クルミを食べたヒトの動脈は、コレステロールが適正値になり。オリーブ油を摂取したヒトに比べて、脂肪過多の食事の後でも柔軟で弾力的なままであったという結果が報告された。

【文献】
Cirtes, B. et al.: Acute Effects of High-Fat Meals Enriched With Walnuts or Olive Oil on Postprandial Endothelial Function. J. Am. Coll. Cardiol. 48: 1666-1671. (2006) [doi: 10.1016/j.jacc.2006.06.057]



2006/10/27 魚の摂取は健康に良く、リスクは小さい

 アメリカ・ハーバード大学のMozaffarianらは、過去の論文を精査し、脂肪の多い魚なら、週1~2回摂取するだけでも死亡率が17%低下し、冠動脈疾患による死亡率は36%低下すると報告した。心疾患予防には、サケを週1回、6オンス(約170g)食べるだけでも十分であると述べている。

 ただし、オオサワラ、サメ、メカジキ、アマダイなど水銀含有率の高い魚は、妊婦は避けるようにとしている。

【文献】

Mozaffarian, D. et al.: Fish Intake, Contaminants, and Human Health - Evaluating the Risks and the Benefits. JAMA. 296: 1885-1899. (2006)



2006/10/24 果物と野菜の摂取は女性の胆石リスクを減らす

 果物と野菜を食べている女性は、胆石形成のリスクが低いことが、77,090人の女性看護師を対象としたアメリカ・ハーバード大学の研究から明らかになった。果物と野菜の摂取量の多い人は摂取量の低い人に比べて胆石手術の必要性が21%低かった。最も多く摂取しているグループの果物と野菜の摂取量は1日あたらい7サービング以上で、最も低いグループは3サービング以下であった。

【文献】

Tsai, C-J., et al.: Fruit and Vegetable Consumption and Risk of Cholecystectomy in Women. Am. J. Med. 119: 760-767. (2006) [doi:10.1016/j.amjmed.2006.02.040]



2006/10/23 睡眠時間が短い人に肥満が多い

 睡眠時間の長短が体重に影響することがアメリカ・アイオワ州で行われたの疫学研究(1999年-2004年)から明らかになった。990人を調査した結果、睡眠時間とBMI値は逆相関が認められた。睡眠時間が6時間以下の人のBMI値は30.24だったのに対して9時間以上睡眠を取った人のBMI値は28.25であった。

 以上の結果から研究者らは、睡眠時間中に起きる穏やかな変化が体重のコントロールと関係している述べている。

【文献】

Kohatsu, N. D. et al.: Sleep Duration and Body Mass Index in a Rural Population. Arch. Intern. Med. 166: 1701-1705. (2006)



2006/10/21 世界的な減塩キャンペーン始まる

 48カ国194人の医療専門家により世界的な減塩キャンペーンが開始された(World Action on Salt and Health (WASH) )。高血圧は脳卒中の62%、心臓病の49%の原因となっている(文献1)。世界では、脳卒中と心臓病で1270万人が死亡しており、他の疾病よりも死亡率が高い(文献2)。また、摂取する食塩を6gまで減少させると脳卒中で24%、心臓病で18%死亡率を下げることが出来ると示唆されている(文献3)。そのため、高血圧予防の観点からWHOでは1日当たりの食塩摂取量を5g以下にすることを目標としている。

World Action on Salt and Health (WASH) のホームページは下記にある。
http://www.worldactiononsalt.com/index.htm

イギリス政府のFood Standards Agencyによる「Salt - eat no more than 6 g a day」キャンペーンは下記のサイトで読める。
http://www.salt.gov.uk/index.shtml

【文献】

1) World Health Organisation: World Health Report 2002: Reducing Risks, Promoting Healthy Life. World Health Organisation (2002) www.who.int/whr/2002

2) World Health Organisation: The Atlas of Heart Disease and Stroke. Sep.
27, (2006)
http://www.who.int/cardiovascular_diseases/en/cvd_atlas_01_types.pdf.

3) He, F. J. & MacGregor, G. A.: How far should salt intake be reduced? Hypertension. 42: 1093-1099. (2003)



2006/10/20 フラボノイドの一種「フィセチン」に記憶力向上効果

 野菜や果物に広く含まれるフラボノイドの一種「フィセチン(fisetin)」を摂取すると、記憶力が向上することを、武蔵野大と米ソーク研究所の共同チームが発表した。

 ラットから記憶をつかさどる海馬を取り出して生きた状態に保ち、フィセチンの水溶液を細胞にかけると、長期増強を担う分子が活性化した。そこで、マウスを使って実験を行った。2個の物体を健康なマウスに記憶させ、24時間後、2個のうち1個を別のものに替えて再び見せる。前日、物体を見せる前にフィセチンの水溶液を飲ませたマウスは、替えた物体にだけ興味を示した。しかし、この水溶液を飲まなかったマウスは、どちらの物体にも均一に興味を示し、前日に見たことを忘れていた。

 このことから、著者らは、フィセチンが脳の海馬に達し、記憶力向上物質として働いたと考えられると結論づけている。

【文献】

Pamela Maher, P. et al.: Flavonoid fisetin promotes ERK-dependent long-term potentiation and enhances memory. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. online Oct. 18, (2006) [doi: 10.1073/pnas.0607822103]



2006/10/18 睡眠不足は肥満、高血圧、心不全などと関連

 アメリカ国立補完・代替医療センター(NCCAM)の研究チームは成人3万1,044人を対象とした健康調査データから不眠症や睡眠障害と肥満、高血圧、心不全、不安障害、うつ病との関連性が認められたと発表した。これまで不眠症は単独の疾患とみなされていたが、不眠症患者で他の疾患を有していなかったのはわすか4%であった。

 睡眠の質と心身の健康との間に強い関連性を認めるエビデンス(証拠)が増えているがこの報告もその1つである。

【文献】

Nahin, R. L. et al.: Insomnia, Trouble Sleeping, and Complementary and Alternative Medicine: Analysis of the 2002 National Health Interview Survey Data. Arch. Intern. Med. 166: 1775-1782. (2006)



2006/10/17 果物・野菜の摂取は摂取カロリーや体重を減らす

 今までの研究によるとエネルギー密度(Kcal/g)の低い食品(果物や野菜)は、摂取カロリーを下げると示唆しているが、体重との関係は明かではなかった。そこで、アメリカに住む7,356人を対象に摂取カロリーや体重と摂取している食品との関係を調査した。

 その結果、低エネルギー密度の食品を摂取している人は、高エネルギー密度の食品(脂肪)を摂取している人より、摂取カロリーが1日当たり男性で425kcal、女性で275kcal低いことが分かった。ところが、低エネルギー密度の食品を摂取している人の1日当たりの食品の摂取重量は、男性で400g、女性で300g多かった。また、標準体重の人は肥満の人に比べて低エネルギー密度の食品(果物と野菜)を多く摂取していた。

 以上のことから、研究者らは果物と野菜の摂取は体重のコントロールに重要な働きをしていると述べている。

【文献】

Ledikwe, J. H. et al.: Dietary energy density is associated with energy intake and weight status in US adults. Am. J. Clin. Nutr. 83: 1362-1368. (2006)



2006/10/11 フルーツジュースの飲用と体重とは関連しない

 アメリカ・疾病管理予防センター(CDC)が就学前の子供を調査した結果、100%フルーツジュースを飲むことと過体重との関連性は見られなかったと発表した。

 就学前の子供〈2-5歳)1572人を対象に1999?2002 年の間調査を行った結果、子供たちは100%ジュースを1日当たり4.70 oz 飲用していた。そこで、100%フルーツジュースと小児用BMI判定基準を用いた体重との関係を調べたところ、統計的な関連性は見られなかった。

【文献】

O'Connor, T. M. et al.: Beverage Intake Among Preschool Children and Its Effect on Weight Status. Pediatrics 118: e1010-e1018. (2006) [doi: 10.1542/peds.2005-2348]



2006/10/10 果物摂取は男性の口腔ガン発症のリスクを下げる

 アメリカ・ハーバード大学の研究チームが行った調査によれば、果物(ビタミンCを多く含む果実、カンキツ果実、カンキツジュースなど)の摂取量が多い男性は、口腔ガン発生のリスクが統計的に有意に低いことが分かった。

 男性42,311人を対象に1986年から2002年の間、4年ごとに調査を行った結果、果物を多く摂取している人は、摂取量が少ない人に比べて30-40%口腔ガン発症のリスクが少なかった。

【文献】

Maserejian, N. N. et al.: Prospective Study of Fruits and Vegetables and
Risk of Oral Premalignant Lesions in Men. Amer. J. Epidem. 164: 556-566.
(2006) [doi: 10.1093/aje/kwj233]



2006/10/09 果物と野菜の摂取は中性脂肪を減らす

 インドで行われた研究によると、果物(107.3g/日)と野菜(緑色の葉菜34.4/日、根・塊茎93.7/日、他の野菜193.6/日)の摂取は血清中の中性脂肪と負の相関があった(p<0.05)。一方、 ミルクの摂取は、血清中の中性脂肪(p<0.01)、LDL-C(p<0.05)、血糖レベル(p<0.1)と正の相関があった。また、飽和脂肪酸の摂取は、血清中のLDL-C(p<0.05)、中性脂肪(p<0.05)と正の相関があった。

【文献】

Bains, K. et al.: Food and nutrient intake in relation to cardiovascular disease among rural males of Punjab, India. Asia Pac. J. Clin. Nutr. 13(Suppl): S95. (2004)



2006/10/08 糖尿病は肥満より死亡リスクが高い

 アメリカで行われた15,408人(44-66歳)を対象とした調査から、太っているか否かにかかわらず糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して死亡リスクが3倍高いことが分かった。一方、糖尿病に罹患していない肥満の人の死亡リスクは非肥満者と変わらなかった。

 この結果は、糖尿病の死亡リスクが高いことと、肥満、糖尿病、疾病の関係は複雑であることを示している。そのため、研究者らは、肥満と疾病との関係についてさらなる研究が必要と述べている。

 この研究で注目されるところは、糖尿病でない肥満の人の死亡リスクが、非肥満者と変わらないとしている点で、従来の予測と一致しない。生活習慣病に係わる血圧、コレステロールなどの危険因子が正常であれば、単純な肥満は死亡リスクにつながらないことを示しているのかも知れない。

【文献】

Slynkova, K. et al.: The role of body mass index and diabetes in the development of acute organ failure and subsequent mortality in an observational cohort. Critical Care 10: R137 (2006) [doi: 10.1186/cc5051]

上記論文は下記のサイトに公開されており全文を読める。
http://ccforum.com/content/10/5/R137



2006/10/07 女性のための骨粗しょう性骨折リスク判定の予測式

 オーストラリア・メルボルン大学の研究チームは、女性の骨粗鬆症性の骨折を予測する式を開発したと発表した。開発された予測式は骨密度だけでなく、様々な危険因子を考慮して作られており、この予測式を用いて2年以内に起こる骨折リスクを75%予測できた。

 予測式を用いてヒップ、背骨、上腕、前腕に障害のある231人の年配の女性と、障害のない448人の年配女性に対して調査を行った結果、2年以内の骨折を75%予測できた。

 以上のことから、この予測式は、骨粗しょう症の女性の治療に役立つと、研究者ら述べている。

【文献】

Henry, M. J. et al.: Fracture Risk (FRISK) Score: Geelong Osteoporosis
Study. Radiology 241: 190-196. (2006) [doi: 10.1148/radiol.2411051290]



2006/10/02 糖尿病患者はガン罹患リスクが高い

 糖尿病患者はガンの罹患リスクが高いと考えられてきたが、その証拠はほとんどなかった。そこで、日本人97,771人(男性46,548人、女性51,223人:40-59歳)を対象に調査を行った結果、男性の糖尿病患者では、非糖尿病の人に比べてガン罹患リスクが27%高かった。特に、肝臓ガン、すい臓ガン、腎臓ガンの発症が多く見られた。

 女性の糖尿病患者は、男性ほど高くなかったが、非糖尿病の人に比べてリスクが21%高く、胃ガン、腎臓ガン、卵巣ガンが多かった。

 糖尿病患者にガンの発生が多い理由として、ガン細胞の成長を促進するインシュリンが多いためにガンの発症が多くなった可能性と、糖尿病患者に肥満が多いためガンの発症が多くなった可能性が考えられるとし、今後の検討が必要としている。

【文献】

Inoue, M., et al.: Diabetes Mellitus and the Risk of Cancer - Results From a Large-Scale Population-Based Cohort Study in Japan. Arch. Intern. Med. 166: 1871-1877. (2006)
 

2006年7月-9月

2006/09/30 ぜん息のリスクは肥満の女性で高い

 カナダで行われた86,144人の調査から、肥満の女性は、肥満の男性よりぜん息になるリスクが高いことが分かった。また、肥満の女性は、標準体重の女性よりぜん息のリスクが85%高く、肥満の男性は、標準体重の男性より21%高かった。BMIが1ユニット増加するとリスクが女性では6%増加し、男性では3%増加した。

 以上のことから、ぜん息は肥満と関係するが、女性と男性とでは異なっていることが明らかとなった。



【文献】

Chen, Y. et al.: The Association Between Obesity and Asthma Is Stronger in Nonallergic Than Allergic Adults. Chest 130: 890-895. (2006)





2006/09/29 サラダの栄養価

 17,500人以上の男(8,282人)女(9,406人)の食事データを分析したところ、生野菜のサラダの摂取量は、血中の葉酸、ビタミンC、ビタミンE、リコピン、α-カロテン、β-カロテンの濃度と相関していることがアメリカ・カリフォルニア大学とルイジアナ州立大学の共同研究から明らかとなった。



【文献】

Su, L. J. and Arab, L.: Salad and Raw Vegetable Consumption and Nutritional Status in the Adult US Population: Results from the Third National Health and Nutrition Examination Survey. J. Amer. Diet. Assoc. 106: 1394-1404. (2006)





2006/09/28 糖尿病予防には減量が最適

 糖尿病予防のため肥満の人(1079人、平均BMI=33.9)を対象に3.2年間調査を行った結果、減量が糖尿病の発症リスクを減らすのに最も効果的だあることが分かった。1キログラム体重を減らすと糖尿病の発症リスクが16%減る。また、体重を減らすには脂肪の摂取を減らし、運動が効果的であるとしている。



【文献】

Hamman, R. F. et al.: Effect of Weight Loss With Lifestyle Intervention on Risk of Diabetes. Diabetes Care 29: 2102-2107. (2006) [DOI: 10.2337/dc06-0560]





2006/09/26 ビタミンD不足は高齢者の転倒リスクを高める

 男女1231人(65歳以上)を調査したオランダの研究から、血液中のビタミンDが不足している高齢者は、十分にビタミンDを摂取している高齢者に比べて、転倒する回数が多いことが分かった。また、ビタミンD不足の人は、1年間に2回転倒するリスクが78%高くなる。

 ビタミンDは骨の健康維持に重要な役割を果たすが、筋肉質量や強度にとっても重要であり、筋肉を損なうと転倒リスクが高まるためと考えられている。



【文献】

Snijder, M. .B. et al.: Vitamin D Status in Relation to One-Year Risk of Recurrent Falling in Older Men and Women J. Clin. Endocrinol. Metabol. 91: 2980-2985. (2006) [doi: 10.1210/jc.2006-0510]





2006/09/25 将来5人に1人は肥満児:アメリカ

 アメリカ医学研究所(IInstitute of Medicine: OM)が、アメリカの児童の17%が肥満であるが、今後10年で子どもの5人に1人が肥満児になる可能性があるとが報告したとCNNが伝えている(06/09/16)。

 IOMによると、プログラムは肥満傾向にある児童を対象として、保護者や学校、地域社会、食品産業、政府が連携して取り組んできた。アメリカ疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の実施した「Verb」プログラムでは、外遊びが減り始める9-13歳の児童の運動を30%も増やすことが出来た。しかし、予算削減に伴い、今年打ち切りに追い込まれた。

 IOMの報告書は、最善策を見極めるためにはさらなる調査が必要だと述べ、子供の肥満が増えている現状を改革するのに必要な国の指導力が不足していると指摘している。

 アメリカ疾病対策センターの元長官で、IOMの委員会のエモリー大学のジェフリー・コプラン博士は、「急性感染症への対応とは性質が異なるが、こうした疾病と同様に子供の肥満対策を重視するべきで、予算削減は問題だ」とコメントしている。また、カリフォルニア大学の研究者トニ・ヤンシー氏は、健康的な食習慣と運動が必要だという認識を定着させるため、社会全体の変化が必要と述べた。



上記CNNの記事は下記のサイトで読める。

http://www.cnn.com/2006/HEALTH/09/13/child.obesity.ap/index.html





2006/09/24 イギリスの給食改革:毎日、給食に果物・野菜を2品目

 子供たちの肥満を防ぐためにイギリスでは、9月から学校給食にジャンクフード(チョコレート、ポテトチップス、炭酸飲料、質の悪い肉など)の利用が禁止され、果物と野菜を毎食ごとに2品以上とし、揚げ物は週2回までとする給食改革がスタートしたとBBCが伝えている(06/09/19)。

 イギリスでは2-15歳までの約30%が太り過ぎとされ、子どもの肥満が大きな問題になっている。そこで、政府は学校給食の改善のために2.8億ポンドの支出を約束し、テレビの人気シェフであるオリバー(Oliver)さんを使ったキャンペーンが行われている。

 イギリス教育技能省のアラン・ジョンション(Alan Johnson)長官は、今回の改革で示した新しい規格により、学校が提供する食べ物は健康的であることを保障すると語った。また、生徒たちは、学校給食から健康的なバランスのよい食事について学び、正しい選択が出来るようになると述べている。



BBCの上記記事のサイトは下記

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/4995268.stm





2006/09/23 マラソンランナーは渇きを感じたら給水が必要

 マラソンランナーが走っているときどのくらい給水する必要があるかについては色々な考え方がある。例えば、アメリカンカレッジ・スポーツ医学(American College of Sports Medicine: ACSM)のガイドラインでは、1時間当たり600-1200mlの給水を推奨している。

 一方、国際マラソンドクター協会(International Marathon Medical Directors Association: IMMDA)の専門家は、状況に応じ柔軟な対応が必要であり、最も普遍的な基準は「渇き」であると報告した(文献)。



【文献】

Hew-Butler, T. et al.: Updated Fluid Recommendation: Position Statement From the International Marathon Medical Directors Association (IMMDA). Clin. J. Sport Med. 16: 283-292. (2006)





2006/09/22 アルツハイマー病になっても新しい記憶が出来る:マウスで

 アルツハイマー病が発症したトランスジェニック・マウスに酵素(ubiquitin
C-terminal hydrolase L1 (Uch-L1))を注射したところ、マウス新しい記憶を作る能力が回復したとアメリカ・コロンビア大学の研究チームが報告した。今後、治療法への進歩が期待される。



【文献】

Gong, B. et al: Ubiquitin Hydrolase Uch-L1 Rescues β-Amyloid-Induced Decreases in Synaptic Function and Contextual Memory. Cell 126: 775-788. (2006)





2006/09/21 食事からのビタミンEの摂取量が低いとぜん息になりやすい

 イギリスで2,000人の妊婦とその子供を5年間追跡調査したところ、妊娠中に食事からのビタミンEの摂取量が最低であった群の母親の子供は、最高であった群の子供の5倍もぜん息になるリスクが高いことが分かった。妊娠16週目までが特に重要な期間であると研究者らは述べている。

 この研究結果から研究者らは、ビタミンEだけを摂取するべきではなく、バランスの良い健康的な食事から毎日のビタミンEの推奨量を摂取することが重要であると述べている。

 果物摂取とぜん息との関係について近々、果物&健康NEWSで取り上げる予定。


【文献】

Devereux, G. et al.: Low maternal vitamin E intake during pregnancy is associated with asthma in 5-year-old children. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 174: 499-507. (2006) [doi: 10.1164/rccm.200512-1946OC]





2006/09/20 リンゴが肺機能を良好に保つ

 イギリスで行われた45~49歳の男性2,500人以上の食事と肺機能の調査から、良好な肺機能はビタミンC、E、ベータカロテン、カンキツ、リンゴ、果物ジュースの高摂取と関係があるらしいことが分かった。しかしながら、統計的に有意差が見られたのはリンゴだけであった。

 1週間当たり5個以上のリンゴを食べている人は肺機能が良好で、そうでない人に比べて肺容量が138ml大きかった。



【文献】

Butlanda, B.K. et al.: Diet, lung function, and lung function decline in a cohort of 2512 middle aged men. Thorax 55: 102-108. (2000)





2006/09/19 果物を無料で学校に提供:意外な調査結果

 アメリカ・ミシシッピー州で、リンゴ、オレンジなど新鮮果物を学校の子供たちに無料で提供した結果、果物の摂取量が増えたことが分かった。

 2004-2005年にグレード5(小学5年)、グレード8(中学2年)、グレード10(高校1年)の学生851人に果物と野菜を無料で提供した。その結果、グレード8とグレード10の学生で果物の摂取量が増加し、果物の無料提供が効果的であると考えられた。しかし、グレード5では消費は増えたようには見えなかった。グレード5で摂取量が増えなかった理由として、幼い子供は、果物や野菜などカロリーに低い食品より、カロリーの高いバターなどの食品を好む傾向にあるためではないかと考えられている。一方、野菜ではどの学年でも消費が増えたとは認められなかった。



 この調査結果は意外であった。小学生の方が学校の先生の言いつけを守るのではないかと思っていたが、むしろ、中高生に果物を配布する方が消費拡大につながることが分かった。思春期になると食生活がかわることと関係しているのかも知れない。この調査結果から考えると、ダイエットと結びつけて中高生に果物を配ることは有効ではないか。



【文献】

Schneider, D.J. et al.: Evaluation of a Fruit and Vegetable Distribution Program - Mississippi, 2004-05 School Year. Morbidity and Mortality Weekly Report 55: 957-961. (2006)





2006/09/18 やせ過ぎモデル規制の動き、広がる

 スペインでやせ過ぎのモデルがファッションショーへの出演を禁止されたが、イギリスでも同様の動きが出ている。

 ロンドン・ファッションウィークが18日から始まるが、食事障害防止団体や閣僚がやせ過ぎのモデルへの懸念を相次いで表明した。スペインと同様に、身長と体重の比率BMIが18にを満たないやせ過ぎのモデルをショーに出さないよう求めている。

 ガーディアン紙やデーリーメール紙によると、ジョウェル(Tessa Jowell)文化相は、もっと現実的な体型の健康な女性になるよう呼び掛けている。同相は「若い女性の行動や感情を形づくる上で、ファッションが果たす力を一瞬たりとも過小評価してはならない」と語っている。また、食事障害協会のスポークスマンは、規制は増大している拒食症や病的飢餓のレベルを減らすのに有益であると語った。

 しかし、ファッションショーの主催者はこうした要請を拒否している。その理由として、ファッションに対して創造的な自由がデザイナーに与えられる必要があるとしている。また、モデルを決めるのはデザイナーで、こうした要請に冷淡というわけではないと述べている。



ガーディアン紙の上記記事は下記のサイトで読める。

http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1874322,00.html

デーリーメール紙の上記記事は下記のサイトで読める。

http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/news.html?in_article_id=405431&in_page_id=1770



 毎日新聞(06/9/18)が、「少女らに誤ったメッセージを送る」としてスペイン・マドリードのファッションショーでモデル5人がやせ過ぎ禁止で失格となったと伝えている。

 事前の身体測定では、モデル68人中5人が規定値に達せず出場禁止となった。身体測定はBMIが18以上とする拒食症防止のための地域規定に基づいて実施された。イタリア・ミラノのファッションショーも規定導入の動きがあるという。





2006/09/16 ヤングアダルトに対する果物・野菜摂取への動機づけ

 アメリカ・南ダコタ州立大学の研究グループは、栄養学を学んでいない大学生(18-24歳)に対し、果物と野菜の摂取の動機づけを行った。

 参加した大学生に対し、4回のニュースレター、1回のインタビュー、E-mailによる個別のフォローアップを4ヶ月間行った。対象グループの果物と野菜の摂取の増加量は1日当たり0.4サービングであったが、動機づけが行われたグループの果物と野菜の摂取の増加量は1日当たり1サービングと統計的に有意に摂取量が増加した。

 以上のことから、コンピュータなどを使った上記の方法は、ヤングアダルトに対する果物と野菜の摂取量を増やすのに効果的であると著者らは述べている。



【文献】

Richards, A. et al.: Motivating 18- to 24-Year-Olds to Increase Their Fruit and Vegetable Consumption. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1405-1411. (2006)





2006/09/15 高カロリー、低食物繊維食が子供の肥満の原因

 高カロリー、低食物繊維食はホルモンのインバランス(不均衡)を招き、子供の過食につながると、アメリカ・カリフォルニア大学のRobert
H. Lustig教授が述べている。
 アメリカでは、子供の最も一般的な疾患は肥満であり、以前は成人にのみ見られた2型糖尿病などの疾患が、現在では子供の間で広がりを見せている。

 現在の食品環境は、カロリーの摂取量が多く、食物繊維の消費量が低下しており、そのため、
脂肪組織へのエネルギーの蓄積や レプチンによる情報伝達などによりインシュリンの分泌に影響を及ぼし結果として肥満になるとしている。



【文献】

Lustig, R. H.: Childhood obesity: behavioral aberration or biochemical
drive? Reinterpreting the First Law of Thermodynamics. Nature Clinic. Prac. Endoc. Metabol. 2: 447-458. (2006) [doi: 10.1038/ncpendmet0220]





2006/09/14 アメリカ31州で成人肥満率が増加

 アメリカでは成人肥満率が31の州で増加し、およそ3分の2の人々が糖尿病、脳卒中、がんといった致命的疾患で亡くなっているとTrust for America's Health (TFAH)2006年版に掲載された。アメリカ・連邦政府や州政府が過体重を抑制する努力をしているにもかかわらず、成人肥満率は1980年の15%から、2004年には32%と増加した。



下記のサイトで報告の要約が読める。

http://healthyamericans.org/reports/obesity2006/





2006/09/13 果樹研究所と京都府立医科大のウンシュウミカンの研究がBBCに掲載

 BBC(2006.9.11)は、果樹研究所で行われたカロテノイドを含むウンシュウミカンは肝疾患、動脈硬化、インシュリン抵抗性のリスクを下げる研究と、京都府立医科大学で行われたウンシュウミカンジュースを飲み続けると慢性ウイルス性肝炎の患者の肝臓ガン発症のリスクを減らす研究を、イギリスの二人の研究者のコメントともに報道した。



 果樹研究所の研究では、三ケ日町に住む1,073人を調査した結果、ウンシュウミカンを多く摂取している人は、重篤な疾患と関係する化学マーカーの値が低いことを見いだした。

 イギリス・ハート財団(BHF)のCathy Rossは、「この研究は、イギリス・ハート財団が推奨している果物と野菜を1日あたり少なくとも5単位食べることを支持する結果である」と述べている。そして、「異なった色の果物と野菜には、異なったビタミンとミネラルを含んでいるので、食事の中に様々な果物や野菜を取り入れるのがよい」とコメントした。



 京都府立医科大学の研究チームは、30人の患者に対して慢性ウイルス性肝炎の患者にカロチノイド含んだウンシュウミカンジュースを毎日、1年間の飲用してもらったところ1年後に、肝臓ガンに罹患した人はいなかった。一方、ジュースを飲まなかった45人の患者のグループで8.9%の発症があった。今後この研究をさらに5年間を続けるのを計画している。

 イギリス・チャリティー・ガン研究所のEd Yongは、この研究の意義を認める一方、サンプルサイズを大きくする必要があると述べるとともに、喫煙やアルコールの過度の飲用による肝硬変が肝臓ガン発症により影響するように見えるので、何か特定の果実で特に強い利益があるかどうかは不明瞭であるとコメントした。



BBCの上記ニューストは下記のサイトで読める。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/5333898.stm





2006/09/12 果物にアニメキャラクター:売り上げアップ

 アメリカのスーパーマーケットで果物や野菜にアニメキャラクター(「ミッキーマウス」や「くまのプーさん」)が貼られている。子どもの肥満などに対する懸念を背景に、健康的なイメージ作りを図る娯楽業界と、市場拡大を目指す生産者らの思惑が一致し、キャンペーンが行われている。

 青果流通業者のイマジネーション・ファームズ(本社・インディアナ州)は娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーからライセンスを取得し、今年5月以来、全米15カ所の生産大手から届く野菜や果物を、「ディズニー・ガーデン」というブランド名で卸している。すでに店頭に並んでいるのは、人気キャラクターのデイジーダックやグーフィーのシールが付いたモモ、ミッキーマウスの箱に入ったブドウなど。くまのプーさんの印を付けたリンゴも発売予定。

 ディズニー・ガーデンの商品を青果売り場全体に広げ、子どもたちをファストフードから呼び戻し、果物の消費を伸ばしたいと同社は考えている。今のところ狙い通り、キャラクター付きのモモやスモモ、ネクタリンは、キャラクターのなかった昨年を上回る売れ行きを示しているという。

 過去にも「ポパイのホウレンソウ」といった例があるが、ライセンス契約のコストなどが壁になり、普及しなかった。ディズニーはイマジネーション・ファームとの契約内容を公表していないが、青果業界誌を編集する専門家は、娯楽業界の目的は家庭向けのイメージアップで、ライセンス料でもうけるつもりはないとみられ、料金は低く設定している可能性が高いとみている。



上記CNNの記事は下記のサイトで読める。

http://www.cnn.com/2006/HEALTH/conditions/09/05/cartoon.fruit.ap/index.html





2006/09/11 食物繊維を摂取するために

 アメリカ・家庭医協会は、コレステロールを下げ、心臓病、糖尿病のリスクを減らす効果がある食物繊維の摂取を勧めている。健康の維持のための食物繊維を摂取するために、1)毎日、少なくとも4.5カップの果実と野菜を摂取する(食物繊維が豊富なのは、リンゴ、オレンジ、ベリー、セイヨウナシ、ブロッコリー、ニンジンなど)。2)精米されていない玄米や全粒小麦粉のパンを摂取する。3)朝食にふすまのシリアルを摂取する(ただし、食物繊維の量をラベルでチェックする)。4)小麦のふすまを他の食物に混ぜて摂取する。5)頻繁に料理した豆を摂取する。



アメリカ・家庭医協会のサイトは下記
http://familydoctor.org/099.xml





2006/09/10 長時間勤務は血圧を上げる

 アメリカ・カルフォルニアで55,000以上の家庭を対象とした調査によると、週40時間以上働いている人は、週11~19時間働いている人より血圧が14%高く、また、週41~50時間働いている人は血圧が17%高いことが分かった。職業別では、事務職と非熟練労働者は専門職より高血圧が高かった。事務職は専門職より23%高く、非熟練労働者は専門職より50%高いことが分かった。



【文献】

Yang, H. et al.: Work Hours and Self-Reported Hypertension Among Working People in California. Hypertension Online Aug. 28. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000238327.41911.52]





2006/09/09 食事摂取基準に関するガイド版の発行

 アメリカとカナダの専門家チームが「食事摂取基準:栄養所要量に関するエッセンシャルガイド(Dietary Reference Intakes:The Essential Guide to Nutrient Requirements」(2006年版)を発行した。推奨食事許容量、適量摂取レベル、生活習慣病予防のための許容限界摂取量、栄養表示の指導原理、食事摂取のための計画とその方法、食物繊維の新しい定義、摂取量確立のためのリスクアセスメントなど。



本の概要は下記のサイトにある(注文も出来る)。
http://newton.nap.edu/catalog/11537.html





2006/09/07 BMIやウエスト周り:高齢男性で健康リスクと関係

 BMIやウエスト周りなどの簡単な測定で、適切に健康リスクを判断することができかについて議論されているが、少なくともイギリスの高齢の男性では効果的であることが断面研究から分かった。60~79歳のイギリス人男性4242人を調査したところ、BMIやウエスト周りの寸法は、体脂肪量指数と密接に関係していた。



【文献】

Ramsay, S. E. et al.: The Relations of Body Composition and Adiposity Measures to Ill Health and Physical Disability in Elderly Men. Am. J. Epidemiol. 164: 459-469. (2006) [doi: 10.1093/aje/kwj217]





2006/09/06 抗酸化物質が網膜退化を抑制

 ビタミンE、ビタミンCなど抗酸化物質をマウスに投与したところ網膜退化の進行が抑制されたと、アメリカ・ジョンホプキンス大学の研究チームが発表した。

 網膜退化は失明の原因でアメリカには10万人の患者がいるとされている。果物や野菜には、こうした抗酸化物質が多く含まれているが、人に対する治療効果については今後の課題である。



【文献】

Komeima, K. et al.: Antioxidants reduce cone cell death in a model of retinitis pigmentosa. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103: 11300-11305. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0604056103]





2006/09/05 ビタミンB6はパーキンソン病のリスクを下げる

 ビタミンB6を多く含む食品を摂取するとパーキンソン病リスクが減少するとオランダの調査から分かった。

 5,289人の男女を対象に調べた結果、ビタミンB6の摂取が最も多い群では、もっとも少ない群に比較してパーキンソン病の発症リスクが半分であった。



 ビタミンB6は神経系の機能の代謝に必須で、牛のもも肉やナッツ、バナナなどに含まれている。また、カロリー単位で比較すると果物に含まれているビタミンB6は、牛乳などよりも多い。



【文献】

de Lau, L. M. L. et al.: Dietary folate, vitamin B12, and vitamin B6 and the risk of Parkinson disease. Neurology 67: 315-318. (2006)





2006/09/04 果物・野菜など低カロリーで体積の大きい食品は健康に有益

 アメリカで、成人7500人を調査した結果、果物や野菜など低カロリーで体積の大きい食品を摂取する人は、食べる量は多くても総摂取カロリーは低く栄養素のバランスも良いことが分かった。

 果物や野菜などを多く摂取している人は、肉やスナックなどを摂取している人に比べて摂取カロリーが1日当たり100kcal低いだけでなく、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンA、C、B6、葉酸の摂取量は逆に多かった。



 その理由は、高カロリーで体積の小さい肉やスナックなどに比べて、果物や野菜などはカロリーが低く、体積が大きいので、満腹感が得られるためである。



【文献】

Ledikwe, J. H. et al.: Low-Energy-Density Diets Are Associated with High Diet Quality in Adults in the United States. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1172-1180. (2006)





2006/09/03 「やせ」は太り過ぎより心臓病の死亡リスクが高い

 80,845人の患者のデータから、心疾患や急性動脈症候群のリスクが高いのは「やや肥満(BMIが25-29.9)」や「肥満(BMIが30-39.9)」の人ではあるけれども、積極的な治療を受けて予後がよく、死亡率は「標準体重(BMIが18.5-24.9)」の人より低いことがアメリカ・カルホルニア大学の研究から分かった。

 一方、「やせ(BMIが18.5以下)」の人は極端な肥満症の人と同様に心疾患による死亡率が高いことが示された。



 若い人のみならず多くの人が「やせ」を目指しているが、その健康上の問題点も伝えていく必要があるように思う。



【文献】

Diercks, D.B. et al.: The obesity paradox in non-ST-segment elevation acute coronary syndromes: Results from the Can Rapid risk stratification of Unstable angina patients Suppress ADverse outcomes with Early implementation of the American College of Cardiology/American Heart Association Guidelines Quality Improvement Initiative. Am. Heart J. 152: 140-148. (2006)





2006/09/02 腎臓結石予防にはレモネードよりオレンジジュース

 毎日1杯のオレンジジュースで腎臓結石を予防でき、レモネードなど他のカンキツよりも優れているとアメリカ・ユタ州のSouthwestern Medical Centerの研究者が発表した。

 研究では、13人の被験者に対し、クエン酸塩、オレンジジュース、レモネードを飲用してもらい各段階の尿と血液を調べた結果、オレンジジュースが尿中へのクエン酸塩の排出レベルを上げ、尿酸血症の生成を抑える、レモネードよりも優れていることが分かった。



【文献】

Odvina, C. V.: Comparative Value of Orange Juice versus Lemonade in Reducing Stone-Forming Risk. Clin. J. Am. Soc. Nephrol. Online Aug. 30 (2006) [doi: 10.2215/CJN.00800306]





2006/09/01-2 健康な十代女子でもビタミンD不足

 イギリスで行われた研究によると、健康な十代女子でも、ビタミンDの血中レベルが不足気味であることが分かった。14人の白人と37人の非白人の少女(平均15.3歳)を対象に血液中のビタミンDとの関係について調査を行った結果、73%はビタミンD不足、17%は非常に不足していることが分かった。また、白人に比べ非白人でビタミンDの血中レベルが低いことも分かった。研究者らは、その原因として日光への暴露が少ないことが原因と分析している。



 この論文は骨の形成に必要なビタミンDが、多くの若い女性で不足していることを示している。同時に、カルシウムを十分に摂取していても、ビタミンDの不足が原因で骨の形成に問題があることも示している。



【文献】

Das, D. et al.: Hypovitaminosis D among healthy adolescent girls attending an inner city school. Arch. Dis. Child. 91: 569-572. (2006)[doi: 10.1136/adc.2005.077974]













2006/08/31 黄色色素ルテイン・ゼアキサンチンで加齢性視力低下抑制
 アメリカ・アイオワ、オレゴン、ウイスコンシン州に住む50~79歳の女性1787人を対象とした疫学調査の結果から、黄色色素であるルテインとゼアキサンチンを豊富に含んだ食事をしている75歳以下の人は、加齢とともに起こる眼科疾患(黄斑変性など)のリスクが低いことが分かった。
 研究者らは、これら化合物が青色光を吸収し活性酸素打ち消すことで損傷を抑制し、かつ、眼細胞膜を強くする作用があるためと推測している。


【文献】
Moeller, S. M. et al.: Associations Between Intermediate Age-Related Macular Degeneration and Lutein and Zeaxanthin in the Carotenoids in Age-Related Eye Disease Study (CAREDS) - Ancillary Study of the Women's Health Initiative. Arch. Ophthalmol. 124: 1151-1162. (2006)





2006/08/30 高脂肪と銅で高齢者の認識力低下

 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、銅の摂取量の多い高齢者は、思考能力や学習能力、記憶能力の低下が加速されることが分かった。

 アメリカ・シカゴに住む65歳以上の3,718人を対象に6年間調査したところ、認識力の低下は飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を多量に摂取と関連しており、銅の摂取で加速すること分かった。一方、鉄と亜鉛にはそのような効果は見られなかった。


【文献】
Morris, M. C. et al.: Dietary Copper and High Saturated and trans Fat Intakes Associated With Cognitive Decline. Arch. Neurol. 63: 1085-1088.
(2006)





2006/08/29 果物と野菜で脳卒中予防:25万人以上の調査から

 257,551人を対象にヨーロッパ、日本、アメリカで行われた8つの調査から果物と野菜を3~5サービング食べている人は3サービング以下の人より脳卒中のリスクが11%低い。また、5サービング以上食べている人は3サービング以下の人より26%低いことが分かった。以上の結果から、著者らは毎日5サービング以上の果物と野菜の摂取を勧めている。

 果物と野菜はビタミンCやβ-カロテン、カリウム、植物性タンパク質、食物繊維など栄養素が豊富に含まれているにもかかわらず、カロリーが低い。さらに、脂肪がほとんどなく、抗酸化物質が多い。とはいえ、今回の調査結果に一番大きく貢献したのはカリウムではないかと著者らは推測している。


1サービング:果物80g、野菜77g


【文献】
He, F. J. et al.: Fruit and vegetable consumption and stroke: meta-analysis of cohort studies. Lancet. 367: 320-326. (2006)





2006/08/27 12時間ごとに脳卒中のリスクが高まる
 脳卒中は朝と夜の2度高まると岩手医科大学の研究グループが発表した。12,957人を対象に調査したところ、朝と夜の各6時~8時に脳卒中のリスクが高くなり、また、睡眠中が最も低いことが分かった。虚血性の脳卒中は朝に多く、出血性の脳卒中は夜に多く発生した。
 この研究の新しいところは、患者の頭部をMRI(核磁気共鳴画像法:Magnetic
Resonance Imaging)で測定した画像を解析しているところにある。この画像の解析から、朝晩に脳卒中のリスクが高まる理由は、血圧が朝晩で高く、血小板が固まりやすい傾向にあり、血液が濃くなっているためではないかと研究者らは推論している。


【文献】
Omama, S. et al.: Differences in circadian variation of cerebral infarction,
intracerebral haemorrhage and subarachnoid haemorrhage by situation at onset. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry. Online Aug. 17. (2006) [doi:
10.1136/jnnp.2006.090373]





2004/08/24-25 BMIと冠動脈心臓病:「やせ」の方が問題
 体格指数(BMI)と冠動脈心臓病の死亡率との関係について40の論文(被験者250,152人)検討を行った結果、BMIが20以下の人は、BMIが30-35に人より死亡率が高いことが分かった。また、死亡率率が最も低かったのはBMIが25-30に人であった。


 司会にファッションモデルを使いその食生活を紹介する健康番組があった。このメッセージは、誰でもこの番組を見ればスマートになれるだろう。しかし、登場しているモデルのBMIは18以下であり、番組のねらいとは逆に科学的データは不健康であることを示している。
 番組を見る人が多ければよいとの風潮とつながっているようで心配である。


【文献】
Romero-Corral, A. et al.: Association of bodyweight with total mortality and with cardiovascular events in coronary artery disease: a systematic review of cohort studies. Lancet 368: 666-678. (2006) [DOI:
10.1016/S0140-6736(06)69251-9]





2006/08/21 インターネットの怖さ
 科学的な記事の検討を行うためには一次資料(文献)に当ることは必須である。しかし、「病気にならない生き方」の著者、新谷弘実氏はそれを怠ったのであろう。文献に当たっていれば、「米国人7万8000人を12年間追跡し牛乳を飲むほど骨粗鬆(こつそしょう)症になる関係を明らかにしたハーバード大の研究がある」とはしないだろう。文献の要約を読むだけでもそのことは分かる。
 この論文の都合の良い誤訳は、初めてではなくトンデモ本の世界では有名なようだ。「だれもが100%スリム!常識破りの超健康革命」(松田麻美子 著)などにも引用されている。誰かが誤報と知りつつインターネットに流したのではないか。
 インターネットの怖いところは、コピー&ペーストで広がると誤訳でもそのまま記事として通用してしまうところにある。そのため、文献に当たるという原則を忘れ、インターネットの検索だけで判断すると、誤った結論に達してしまう。「自分で確かめること」の大切さを改めて思った。





2006/08/20 牛乳は人に大切な食材である
 毎日新聞が、牛乳を有害とする「病気にならない生き方」(新谷弘実著:サンマーク出版)を取り上げた。このことに対して、その非科学性について仁木良哉北大名誉教授の批判が下記の毎日新聞のサイトに掲載されている。当然の反論であり、牛乳は人に大切な食材である。


毎日新聞のサイト
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hokkaido/shoku/
gyunyu/news/20060801hog00m100003000c.html




・牛乳は子牛が飲むもの。人間が飲むのは自然の摂理に反する


 仁木 子牛のための牛乳と食品としての牛乳の意義を混同している。人類は牛を紀元前数千年前から家畜化し、牛乳を食べ物として利用してきた。牛乳は気候条件や土壌に恵まれない国や地域の人々の命を支えてきた。この優れた食品である牛乳の利用がなぜ自然の摂理に反するのか。


 仁木氏の反論は当然だろう。非科学の典型的な言い回しで、科学的根拠など全くない。自然の摂理を明らかにするのが科学ではないのか。



・米国人7万8000人を12年間追跡し牛乳を飲むほど骨粗鬆(こつそしょう)症になる関係を明らかにしたハーバード大の研究がある


 仁木 その論文には「牛乳を飲むほど骨粗鬆症になる」とは書かれていない。牛乳の摂取によって骨折のリスクが減る証拠はないと結論づけているが、日本人の1日所要量に相当するカルシウム(600ミリグラム)を摂取したグループと、それ以上摂取したグループとを比較しており、カルシウム摂取量が所要量まで平均していっていない我々日本人には意味のないデータだ。自分の主張に都合良く訳している。


 上記の論文は、Feskanich, D. et al.: Milk, dietary calcium, and bone fractures in women: a 12-year prospective study. Am. J. Public. Health. 87: 992-997. (1997)であり、仁木氏の指摘の通りである。記者は、記事にする前にこの点を自身で確認しているのだろうか。
 さらに付け加えるなら、同じグループが骨粗しょう症の発症リスクの制限因子はビタミンDであるとする論文を2003年に発表しており、そこにも「牛乳を飲むほど骨粗しょう症になる」とはどこにも記載されていない。この論文はFeskanich,
D. et. al.: Calcium, vitamin D, milk consumption, and hip fractures: a
prospective study among postmenopausal women. Am. J. Clin. Nutr. 77: 504-511. (2003)である。





2006/08/19 食器の大きさも太る原因
 85人の食品・栄養の専門家を招いた会合でアイスクリームのとりわけ量の測定から、体重を減らしたいならば食器のサイズを小さくすることが必要と、アメリカ・コーネル大学の研究者らが発表した。
 会合の参加者に対して17オンス(約482cc)または34オンス(約964cc)容量の食器と、2オンス(約57cc)または3オンス(約85cc)のスクープ(さじ)を無作為に渡され、自らアイスクリームを取り分け、その量を測定した。その結果、食器のサイズを2倍にすると取る量が31%増加し、大きめのスクープでは14.5%増加した。
 自分が取った分量やそのカロリーを見た目で判断できる食品や栄養の専門家でも大きめの食器を持てば多く取ってしまうことが分かった。
 食べ物の摂取に影響を与える要因には、食品の種類、気温、同席者の食べるスピードなどさまざまな因子が指摘されているが、取り分ける食器のサイズも影響することが分かった。


【文献】
Wansink, B. et al.: Ice Cream Illusions: Bowls, Spoons, and Self-Served Portion Sizes. Amer. J. Prev. Med. 31: 240-243. (2006) [doi:
10.1016/j.amepre.2006.04.003]





2006/08/18 ビタミンCは風邪予防に効果的
 秋田県の村で5年間、ヒト介入研究を行った結果、ビタミンCは風邪予防に効果的であると国立がんセンターの研究グループが発表した。
 ビタミンCのサプリメントを50mg飲用したグループと500mg飲用したグループについて5年間風邪をひいた回数やその程度などを調査した。その結果、ビタミンCの摂取量の多いグループは少ないグループに比較して、試験期間に3回以上風邪にかかるリスクは0.34(0.12-0.97)となり、統計的に有意に66%低かった。
しかし、風邪をひいている期間や症状の程度には差が見られなかった。


【文献】
Sasazuki, S. et al.: Effect of vitamin C on common cold: randomized controlled trial. Eur. J. Clin. Nutr. 60: 9-17. (2006)





2006/08/17 学習に使われた神経細胞は生き残る
 大人になっても神経細胞は新たに生まれ、学習や記憶に使われた神経細胞だけが生き残って神経回路に組み込まれる可能性が高いとアメリカ・ソーク研究所の研究グループが発表した。
 マウスを用いて学習や記憶にかかわる脳の領域で、遺伝子操作技術により新たに生まれる神経細胞見分けられるようにした。同時にこの神経細胞で特定の神経伝達物質の受容体(NMDA-receptor)が働かず、情報を受け取れないようにしたマウスもつくった。

 両方のマウスを比べると、情報を受け取れなくしたマウスでは、新たに生まれた神経細胞の生存率が4分の1に低下していた。このことから、情報を受け取れない細胞は死に、情報を受け取った細胞が生き残り神経回路に組み込まれることが分かった。
 以上のことから、大人になっても新たにできる神経回路には、学習した特定の情報が刻みこまれていると考えられた。


【文献】
Tashiro, A. et al.: NMDA-receptor-mediated, cell-specific integration of new neurons in adult dentate gyrus. Nature online 13 Aug. (2006) [doi:
10.1038/nature05028]





2006/08/16 よく食べる果物1位はバナナ、健康・美容ではリンゴ
 日本バナナ輸入組合が行った消費動向調査によると、最も食べられている果物はバナナで全体の56.6%で第1位、次いでリンゴ(43.3%)、ミカン(37.0%)の順であった。バナナを食べる理由は、価格が手ごろ(49.3%)で食べやすく(36.1%)、栄養が優れている(34.1%)などの理由が選択されている。
 健康・美容に良いと思われる果物として認められているのは、リンゴが43.7%でトップで、次にバナナ(43.4%)、キウイフルーツ(37.3%)と続いている。良く食べられる果物は健康、美容の面と連動しているようだ。ただ、食生活で日ごろ心掛けている点では、野菜を多く摂取する人が64.9%に対して、果物は25.8%とかなり低い値であった。


バナナ・果物消費動向調査結果のダイジェストは下記のサイトで読める。
http://www.banana.co.jp/chousa2/





2006/08/13 コエンザイムQ10の摂取上限量決定困難
 コエンザイムQ10について、内閣府食品安全委員会(寺田雅昭委員長)は8月10日に委員会を開催し、データ不足のため安全な摂取上限量を決めることは困難との評価書案を原案通り承認した。評価書では、「原則として医薬品の1日あたりの摂取量(30ミリグラム)を超えないよう配慮することが重要」としたうえで、メーカーに長期摂取の安全性確認や、健康被害情報の収集を求めた。
 コエンザイムQ10は、動植物の体内でも合成される物質で、抗酸化作用があるとされ、心不全の治療薬では1日30ミリグラムまでと決められているが、健康食品としての基準はなかった。


食品安全委員会のコエンザイムQ10の評価書は下記のサイトで読める。
http://www.fsc.go.jp/iinkai/i-dai155/dai155kai-siryou1.pdf





2006/08/10 加齢性黄斑変性は摂取する炭水化物の質と関連
 高齢者の視野損失の原因の一つである加齢性黄斑変性(AMD)の発症は、摂取する炭水化物の量よりも質と関係があるとアメリカ・タフツ大学などの研究グループが発表した。
 アメリカの女性看護師に対するNurses' Health Study (NHS)の10年以上のデータを解析した結果、炭水化物の質の指標であるグリセミックインデックス(GI)の高い食事をしていた女性はGIの低い食事をしていた女性は、加齢黄斑変性症の発症に対し高いリスクがあることが分かった。
 パンやフライドポテトのようなGI値の高い食品は、レンズマメや果物などのようなGI値の低い食品より血糖値を急速に上げるためではないかと推測している。


【文献】
Chiu, C.J. et al.: Dietary glycemic index and carbohydrate in relation to early age-related macular degeneration. Am. J. Clin. Nutr. 83: 880-886.
(2006)





2006/08/09 ダミー薬でも定期的に薬を飲むと健康によい
 例えダミーの薬(偽薬:プラシーボ)でも定期的に薬を飲む人は、そうしない人に比べて死亡率が低いことが分かったとカナダ・アルバータ大学の研究者らが発表した。
 薬物治療に関する21の研究(46,000人以上の患者対象)を分析した結果(メタアナリシス)、指示を良く守り規則的に薬を飲む患者は、守らない患者より死亡リスクが44%低いことが分かった。また、ダミーの薬でも規則的に飲んでいる人は死亡率が低かった。
 このことは、「治療されている」あるいは「自己管理している」という認識が疾病の回復に有効であることを示している。


【文献】
Simpson, S. H. et al.: A meta-analysis of the association between adherence to drug therapy and mortality. BMJ 333: 15-18. (2006) [doi:
10.1136/bmj.38875.675486.55]





2006/08/08 心臓の健康によい男性のための生活習慣
 2年ごとにBMIや喫煙状態など生活習慣因子に関する詳細な情報を収集するとともに、心疾患と診断された症例の医学的確認を行った結果、禁煙、スリムな体型を保つ、毎日の運動、適量の飲酒、ヘルシーな食事を守ることにより、たとえ高血圧症や高脂血症の治療を受けていても、リスクは低減するアメリカ・ハーバード大学の研究グループが発表した。
 40~75歳の男性約4万3,000人を対象に、16年にわたって5つの生活習慣が検討された。その結果、心臓の健康によいものとして、BMI(肥満指数)を25未満に保つ、毎日少なくとも30分運動する、アルコール摂取は1日平均1/2~2杯の適量とする、果物や野菜、穀物繊維、ナッツ類、豆類、鶏肉、魚を多く摂取し、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量を少なくした健康的な食事をとることなどが分かった。
 5つの生活習慣を守った男性は、全く守らなかった男性に比べて、冠動脈性心疾患の発症リスクが87%低くかった。もし全被験者が5つの生活習慣を守っていたならば、62%は予防できていた可能性があると研究者らは結論づけている。また、降圧薬やコレステロール低下薬を服用中の男性でも生活習慣を守ることで57%を予防できることが明らかになった。


【文献】
Stephanie E. Chiuve, S.E. et al.: Healthy Lifestyle Factors in the Primary Prevention of Coronary Heart Disease Among Men: Benefits Among Users and Nonusers of Lipid-Lowering and Antihypertensive Medications. Circulation 114: 160-167. (2006) [doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.106.621417]





2006/08/07 食べても太らない抗肥満ワクチン
 ラットを用いてワクチンで肥満に関与するホルモン(グレリン)の働きを弱め、体重の増加を抑制できたとアメリカ・スクリプス研究所と大阪市立大の研究チームが発表した。人間で同様の効果が得られるかは未知数だが、ワクチン摂取による肥満予防法が開拓されるかもしれない。
 グレリン(ghrelin)と名付けられたホルモンは、日本で発見され、食欲促進や脂肪蓄積などの働きがある。そこで、グレリンに対するワクチンを作成し、ラットに摂取させたところ、食べる量に変化はなかったにもかかわらず1日当たりの体重増加はワクチンなしのラットの3分の1以下で、脂肪の蓄積も少なかった。
 グレリンは摂食を促進することが知られている。このことから、ワクチンを摂取するとグレリンの働きが弱まり、エネルギー消費量が増えたため、体重が減少したと考えられた。


【文献】
Zorrilla, E. P. et al.: Vaccination against weight gain. Proc. Natl. Acad.
Sci. USA Online Aug. 4 (2006) [doi: 10.1073/pnas.0605376103]


 グレリンは、アミノ酸28個からなり、3番目のセリン残基が脂肪酸(n-オクタン酸)でアシル化修飾された構造のペプチドで、強力な摂食促進作用を持つことが知られている。グレリン発見は下記の論文である。
Kojima. M. et al.: Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature 402: 656-660. (1999)





2006/08/04 肥満解消には果物と食物繊維の摂取が重要
 アメリカ・南カルフォルニア大学で52人の正常体重の人と同数の肥満の人を調査したところ、正常体重の人は、肥満の人より果物と食物繊維を多く摂取していることが明らかになった。60項目の食物頻度アンケート調査から、太りすぎ、または、肥満の人は、総脂肪、飽和脂肪、コレステロールの摂取が多く、炭水化物、複合糖質、食物繊維、果物の摂取量が少ないことが分かった。体脂肪と食物繊維の摂取量、体脂肪と果物の摂取量はともに統計的に有意に逆相関を示した。
 以上の結果から、肥満は食物繊維と果物の摂取が少ないことが要因であると結論づけている。


【文献】
Davis, J. N. et al.: Normal-Weight Adults Consume More Fiber and Fruit than Their Age- and Height-Matched Overweight/Obese Counterparts. J. Amer. Diet. Assoc. 106: 833-840. (2006)





2006/08/01 女の子の死因はピーナッツバターではない
 ピーナッツバターを塗ったトーストを食べた男の子とキスをした女の子がピーナッツアレルギーで死んだ事実はないと検死官が断定したと2006年5月12日のCBSニュースが伝えている。
 2005年11月にカナダ・ケベックに住む15歳の少女の死因はぜん息による発作が原因であることが分かった。少女は、ピーナッツアレルギーだったが、死因と関係がなかった。
 検死官は、少女はぜん息による呼吸不全で死んだと結論づけた。ボーイフレンドは彼女とキスする約9時間前にピーナツバターを塗ったトーストを食べたが、ピーナッツの痕跡は彼の唾液の中に長い間残っていることはないと検死官は述べている。最新の研究では、約1時間でその痕跡はなくなるとしている。


 少女がピーナッツバターを食べた男の子とキスした結果、死んだかもしれないとの推測は世界中で報道された。しかし、3月に検死官はそのことは誤りであると発表し、5月に死因はぜん息であるとの最終報告書を公表した。


 「少女の死因はぜん息」のニュースについて日本語のサイトを検索したが見つけることはできなかった。食物アレルギーの事件として昨年、大きく報道されたのでこのニュースも伝える必要があるのではないだろうか。
 多数の個人ウエッブサイトには誤報が今もそのまま掲載されている(3月の報道を掲載していたサイトが2カ所あったが、5月の報道を伝えているサイトは見つけられなかった)。


上記CBSニュースは下記のサイトで読める。
http://www.cbsnews.com/blogs/2006/05/12/publiceye/
entry1614851.shtml














2006/07/31 グリセミック・インデックスで食後血糖値を予測

 グリセミック・インデックスで食事を計算するとその食事が血糖値に与える影響の良い予測手段であるとカナダ・トロント大学の研究チームが発表した。食後の血糖値は、脂肪やタンパク質含有量との相関は認められなかったが、炭水化物含有量とグリセミック・インデックス値とは相関関係が認められた。このことから研究者らは糖尿病の食事管理などにグリセミック・インデックスが有用であるとしている。



【文献】

Wolever, T.M.S. et al.: Food glycemic index, as given in Glycemic Index tables, is a significant determinant of glycemic responses elicited by composite breakfast meals. Am. J. Clinical Nutrition 83: 1306-1312. (2006)





2006/07/30 紫外線の影響調査:WHO報告

 太陽からの紫外線が原因の悪性腫瘍などで、年間6万人が死亡していると世界保健機関(WHO)が公表した。WHOは、太陽の光は人間が生きていく上で必要なものだが、紫外線を浴びすぎると健康を損なうとして、注意を呼び掛けている。

 WHOによると、皮膚がんの中でも悪性の悪性黒色腫で、年間4万8000人が死亡。残る1万2000人が、別の種類の皮膚がんで亡くなっているとしている。


 WHOは、くる病や骨軟化症を防ぐビタミンDの生成に紫外線は必要だとした上で、皮膚がんの原因は90%が太陽から降り注ぐ紫外線だと指摘している。

 紫外線は目に見えず、感じることもできないが、曇天でも降り注いでおり、直接浴びなくとも、雪や地面、海面で反射したものを浴びる可能性があるとして、十分な注意が必要である。


 そのため、直射日光を避けたり、日焼け止めを利用して、過剰な紫外線を浴びないよう呼び掛けている。



WHOのプレスリリースは下記のサイトにある。
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs305/en/index.html





2006/07/28 平成17年簡易生命表が公表

 平成17(2005)年生まれの日本人の平均寿命は、男性が78.53歳、女性が85.49歳で、男女とも前年比で6年ぶりのマイナスとなったことが厚生労働省の簡易生命表で明らかになった。マイナスになったのは昨年のインフルエンザの流行による死者数の増加が原因である。

 国際比較では、女性は21年連続で長寿世界一、次いで、香港、スペインの順である。男性は前年の2位から4位に下がった。男性の1-3位は香港、アイスランド、スイスの順である。

 平成17(2005)年生まれの人が将来、死亡する原因となる可能性があるのは男女ともがんがトップで、心臓病、脳卒中を加えた3大死因による将来の死亡確率は男性が56.3%、女性が54.2%である。3大死因を克服したと仮定した場合、平均寿命は男性が8.49歳延びて87.02歳に、女性が7.68歳延びて93.17歳になるとしている。



平成17年簡易生命表は下記のサイトで読める。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life05/index.html





2006/07/27 乳製品が高血圧を予防

 乳製品の摂取が血圧降下に役立つことがアメリカ・ハーバード大学の研究により明らかとなった。

 アメリカのFamily Heart Study試験に参加した4,797人を対象に、チーズ、ヨーグルト、牛乳などの乳製品の摂取量(1日3食分以上~1/2食以下)によって4グループに分け、血圧との関係を調べた。

 その結果、乳製品の摂取が最も多い群は、最も少ない群に比べ、収縮期血圧が平均2.6mmHg低かった。しかし、飽和脂肪摂取量でみると、血圧に対する効果は飽和脂肪摂取量の少ないグループのみで認められた。このグループでは、乳製品摂取の最も多い群は最も少ない群に比べ収縮期血圧が3.5mmHg低く、また高血圧になるリスクは54%低かったという。

 以上の結果より飽和脂肪の摂取に気をつければ乳製品の摂取は高血圧予防に有効であることから、飽和脂肪の多い無調整のものよりも、低脂肪のものがよいとしている。



【文献】

Luc Djousse, L. et al.: Influence of Saturated Fat and Linolenic Acid on the Association Between Intake of Dairy Products and Blood Pressure. Hypertension 48: 335-341. (2006) [doi:10.1161/01.HYP.0000229668.73501.e8]





2006/07/24 食事バランスガイド実施で果物不足

 健康の維持・増進を目的に、食事バランスガイドでは、毎日の食事を5つ(主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物)に区分し、区分ごとに摂取適量範囲を示している。

 農林水産省が呼びかけた食事バランスガイド調査に応募した4435人の7日間の食事内容を調査した。

 その結果、7日間全て食事バランスガイドに沿った食事をとれていた人の割合は全体の0.1%しかなく、反対に1日も守れなかった人の割合は全体の8割以上を占めていた。

 適量範囲だったのは主菜と女性の主食のみで、その他の区分では食事量が不足していた。特に果物は男性、女性いずれも適量が2つ(SV)であるのに対し実際に食べている量は約1つ(SV)前後でしかなく、不足が目立った。

 参加した人の感想には「朝から野菜を食べないと足りないので前の晩に用意する習慣ができた」(30代男性)という前向きな意見の一方、「考えながら食するのは疲れた」(30代男性)との本音もあった。




農林水産省「食事バランスガイド実践週間」実施結果の概要は下記にある。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060721press_7b.pdf





2006/07/23 空腹時血糖値の組み合わせた高血糖測定法

 糖尿病や心筋梗塞などの血管障害につながる恐れが高い食後高血糖を1回の血液検査で簡単に見つける方法について毎日新聞が伝えている(07/7/18)。従来の手法では半分程度しか捕捉できなかった糖尿病の初期兆候を80%超の感度で検出できる。

 食後、急速に血糖値が高くなりその状態が持続する食後高血糖は、糖尿病の初期の兆候とされる。通常の健康診断で調べる空腹時血糖値では見極めが難しい。

 そこで、糖の一種で血液中のブドウ糖の状態と関連する1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)と空腹時血糖値とを組み合わせた測定法を開発し、糖尿病の診断に使うブドウ糖負荷試験と比較したところ、85%前後の高い感度で把握できていることが分かった。

 空腹時血糖値のみを基準にした場合は50%程度しか検出されないので食後高血糖の診断法として有用であるとしている。



【文献】

金沢裕一.1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)による食後高血糖のスクリーニング―空腹時血糖値の組み合わせ法―.糖尿病 49: 319 (2006)





2006/07/21 心筋梗塞に関与する遺伝子

 心筋梗塞の発症に関与する1塩基遺伝子多型性(SNP)について検討した結果、リスクに関与する遺伝子の型を見つけたと理化学研究所などの研究グループが発表した。

 心筋梗塞患者3459人と健常人3955人遺伝子の違いを調べた結果、PSMA6という遺伝子を構成する1個の塩基(SNP)違いが心筋梗塞に関係することが分かった。

 心筋梗塞になりやすいGG型の割合は健常人は8.9%であったが、患者では12.4%と多いことから、このGG型を持つ人は、持たない人に比べて心筋梗塞のリスクが1.45倍高くなる。また、この遺伝子の働きを抑制したところ、心筋梗塞の引き金となる心臓血管の炎症作用が抑制された。



【文献】

Ozaki, K. et al.: A functional SNP in PSMA6 confers risk of myocardial infarction in the Japanese population. Nat. genet. Online 16 July (2006) [doi: 10.1038/ng1846]





2006/07/20 血液中のビタミンEと前立腺ガン

 血液中のビタミンE(α-トコフェロールとγ-トコフェロール)が高いと前立腺癌のリスクが低いことがフィンランドの50-69歳の男性29,133人の調査から分かった。血液中のα-トコフェロール値が高い人は低い人に比べて51%、γ-トコフェロールでは43%リスクが低くなる。



【文献】

Stephanie, J. et al.: Serum -Tocopherol and -Tocopherol in Relation to Prostate Cancer Risk in a Prospective Study. J. Natl. Cancer Inst. 97: 396-399. (2005)





2006/07/19 肥満と飲料の関係調査

 働く男女800人を対象に、飲み物の摂取意識について花王がアンケート調査を行った。それによると1日に摂る飲み物の量は平均1.48リットルと成人に必要な量とほぼ同じであった。よく口にする飲み物はコーヒーや清涼飲料水が35%、アルコール飲料が17%と、高カロリーのものが多かった。

 体型評価(BMI)値が25以上ある「肥満者」をみると、よく口にする飲み物は、缶コーヒー46%、アルコール飲料40%、炭酸飲料30%などで、平日の1日に飲み物から摂るエネルギーは平均279kcalであった。一方、「標準」「やせ型」では208kcalと低かった。



花王のプレスリリースは下記にある。
http://www.kao.co.jp/corp/news/2006/2/n20060530-01re.html





2006/07/13 エネルギーの消費の多い高齢者は長生き

 70歳~82歳の男女302人を対象に6年間に渡って追跡調査した結果、日々の活動でよりエネルギー消費の多かった人は、そうでない人よりも死亡率が低いことが分かった。

 消費エネルギーが1日当たり287kcal増加すると死亡リスクが32%低かった。また、消費エネルギーが1日当たり770kcal以上の人は、521kcal以下の人より死亡リスクが69%低いことも分かった。521kcal/日以下の人の死亡率は24.7%であったのに対し、770kcal/日以上の人死亡率は12.1%であった。

 以上の結果より、著者らは、運動も含めどんな活動でもエネルギーの消費量を増やせば高齢者は長生きできると結論づけている。



【文献】

Manini, T. M. et al.: Daily Activity Energy Expenditure and Mortality Among Older Adults. JAMA. 296: 171-179. (2006)





2006/07/10 仕事のストレスとメタボリックシンドロームは関連

 仕事にストレスがある人は、メタボリックシンドローム(肥満、高血圧、高コレステロール値など心血管系の危険因子が重なった病態)を発症しやすいとイギリス・ロンドン大学の研究グループが発表した。

 35~55歳の英国公務員10,308人を14年間追跡した結果、仕事のストレスが増加するにつれ、メタボリックシンドロームの発症率が徐々に上昇することが分かった。特に、長期にわたりストレスがある男性では、ストレスがないと答えた人よりメタボリックシンドロームの発症率が2倍であった。



 過去の研究では、職場で公平に扱われていると感じている公務員は心臓病リスクが低く、職場で権限がない人はリスクが高いという報告がある。労働者の仕事に対するコントロール力と参加意識を高めるよう職場を設計し直したところ、病欠で休む日が少なくなった。




【文献】

Chandola, T. et al.: Chronic stress at work and the metabolic syndrome:
prospective study. BMJ, 332: 521-525. (2006)





2006/07/08 夜の血圧は心不全と関係している

 スウェーデンに住む951人の男性を対象に1990年~1995年まで追跡調査を行った結果、夜に高血圧気味である人は、うっ血性心不全を発症するリスクがそうでない人に比べて約2~3倍高く、潜在的に危険であるとスウェーデンの研究チームが発表した。



【文献】

Erik Ingelsson, E. et al.: Diurnal Blood Pressure Pattern and Risk of Congestive Heart Failure. JAMA. 295: 2859-2866. (2006)





2006/07/07 40代は孤独を感じている

 孤独感は、心臓病やうつ病などの疾患や、家庭内暴力など他の問題のリスクを上昇させると考えられているが、成人の3分の1以上は孤独を感じており、特に40歳代でその傾向が強いと、イギリスとオーストラリアの研究グループが発表した。

 オーストラリアに住む18歳以上の成人1,289人を対象に30分の電話インタビューを実施した結果、成人の35%が孤独感をもっており、そのレベルは20代で上昇し始め、40~49歳でピークに達することが明らかになった。一方、50歳以上ではレベルが最も低かった。退職した人より失職中の人で孤独感が強く、世帯収入が低い人ほど強く感じていた。また、今回の調査結果は、退職で社会的接触が減少し、年齢とともに孤独感が増すというこれまでの見解とは異なっていた。



【文献】

Lauder, W. et al.: Social capital, age and religiosity in people who are
lonely. J. Clinical Nursing 15: 334-340 (2006) [doi: 10.1111/j.1365-2702.2006.01192.x]





2006/07/05 サクランボ果汁で運動による筋肉の回復が早い

 サクランボ果汁を飲むと運動後の筋力の回復が早いことがアメリカ・バーモント大学の研究から明かとなった。

 14人の男性に対してサクランボ果汁を含む混合飲料を飲む群と、サクランボ果汁を含まない飲料を飲む群に分け、12オンスの飲料を1日2本、3日間飲用し、4日目に片腕の筋肉を20回収縮緊張させる運動を行ったのち、その後4日間、同じ飲料を飲んだ。

 その結果、サクランボ果汁には運動で誘発された筋肉損害を緩和する効力があることが分かった。特に、筋力は、サクランボ果汁を含まない飲料群で22%の低下したが、サクランボ果汁入り飲料群では4%であった。



【文献】

Connolly, D. et al.: The efficacy of a tart cherry juice blend in preventing the symptoms of muscle damage. Br. J. Sports Med. Online 21 June 2006 [doi: 10.1136/bjsm.2005.025429]





2006/07/04 日本が高齢化、少子化ともに世界一

 日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は21.0%と世界最高になり、15歳未満は13.6%と世界最低で、高齢化・少子化ともに世界で最も進行した国になったことが、平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計から分かった。5年前の平成12(2000)年の調査では、いずれもイタリアに次いで2番目だったが今回逆転した。

 昨年の人口は1億2776万人で、5年前より83万人増えた。年齢別では、15歳未満が1740万人、15~64歳は8337万人と、ともに前回より減ったが、65歳以上は481.5万人増の2682万人だった。

 日本の高齢者の割合を各国と比べると、1980年に9.1%と先進7カ国で最低だったが、平均寿命の伸びと出生率の低下で急伸した。2000年は17.3%で、人口10万人以上の192カ国・地域中最高だったイタリア(18.2%)に迫り、今回イタリアの20.0%を抜いた。

 一方、15歳未満は、前回最低だったイタリアが14.0%で下から4番目になり、日本が最低になった。出生率が改善傾向にあるフランスは18.2%、出生率が2を上回る米国は20.8%となっている。



平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計の少子・高齢化のデータは下記のサイトで読める。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/01.htm

2006年4月-6月

2006/06/29 果物を含む食生活は大腸ガンを予防する

 男性の自衛隊員1,341人を対象に大腸ガンと食事のパターンとの関係を解析した結果、果物、野菜、乳製品、デンプンを多く摂取し、アルコールの摂取量が少ない人は大腸ガンになりにくいことが九州大学と自衛隊病院との共同研究から分かった。

 研究では1)果物、野菜、乳製品、デンプンを多く摂取し、アルコールの摂取量が少ない(DFSAパターン)、2)動物性食品を多く摂取しているパターン、3)日本型食生活の三つの食事パターンに分けて解析したところ、DFSAパターンの食事をしている人は大腸ガンの前駆体である腫瘍ができるリスクが38%少ないことが分かった。一方、他の二つの食事パターンではこうした傾向は認められなかった。



【文献】

Mizoue, T. et al.: Dietary Patterns and Colorectal Adenomas in Japanese Men - The Self-Defense Forces Health Study. Amer. J. Epidemiol. 2005 161: 338-345. (2005) [doi:10.1093/aje/kwi049]





2006/06/27 偏った食生活は喫煙と同じくらい健康に悪影響:オランダ

 オランダの国立公衆衛生・環境保護研究所(RIVM)は、果物、野菜、魚をほとんど食べない食生活は喫煙と同じくらい健康に悪影響お及ぼすと発表した。

 報告では、現在オランダでは、深刻な病気や死亡の原因となっている食習慣のうち、最大のものが果物、野菜、魚の摂取不足と指摘している。また、何年もの闘病生活を強いられるリスクまで考慮に入れると、不健康な食生活は喫煙と同じくらい健康に大きな害を及ぼすとしている。

 オランダでは、約75%が十分に果物や野菜を摂取していない。そのため、不健康な食生活が糖尿病や心疾患、ガンを引き起こしているとしている。



報告書は下記のサイトで読める。
http://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/270555009.pdf





2006/06/25 コエンザイムQ10:安全な上限量決定は困難

 コエンザイムQ10について、内閣府食品安全委員会は「データ不足のため、食品として摂取する際の安全な上限量を決めることは困難」との評価書案をまとめた。ただし、健康食品の製造にあたっては、医薬品としての用量(1日当たり30μg)を超えないよう配慮する必要があるとしている。

 コエンザイムQ10は動植物の体内で合成されている物質で、抗酸化作用があり、心不全治療では用量が決められているが、健康食品用としては基準がなかった。

 コエンザイムQ10入りの食品を摂取した消費者が胃痛やおう吐を訴えたとの報告もあり、厚生労働省が食品安全委員会に食品としての健康影響評価を依頼した。

 安全委員会は「健康被害との因果関係がはっきりせず、評価できなかった。医薬品としての用量を超えても、必ずしも健康被害が出るわけではない。消費者は、医薬品の用量を認識しつつ、摂取後に具合が悪くなることがあれば医療機関へ相談してほしい」としている。

食品安全委員会のコエンザイムQ10の審議結果は下記のサイト
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_coq10180622.pdf

食品安全委員会のコエンザイムQ10に関する意見募集は下記のサイト
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_coq10180622.html





2006/06/24 カンキツ果汁は骨を強くする

 骨粗しょう症モデルのネズミの朝食にオレンジジュースとグレープフルーツジュースを与えたところ、骨が強くなったとアメリカ・テキサスA&M大学の研究グループが発表した。ジュースに含まれている抗酸化成分が骨をもろくするオキシダントの働きを抑制するためではないかとしている。



【文献】

Deyhim, F. et al.: Citrus juice modulates bone strength in male senescent rat model of osteoporosis. Nutrition 22: 559-563. (2006)





2006/06/23 DNAワクチンとは

 遺伝子免疫とも呼ばれ、一種の遺伝子治療である。

 今までのワクチンは、病気の原因であるウイルスを不活化あるいは弱毒化したものを体内に注入し、体内で自然に抗体を作らせ、免疫の働きを利用して感染を予防する。

 DNAワクチンは、ウイルスの抗原になる部分の遺伝子を体内に導入し、体内で抗原を作らせ免疫を誘導する方法である。従来の方法はウイルス全体を接種する必要があったが、この方法によると特定のタンパク質のみが生成されるので、毒性を示す部分を取り除くことができる。

 DNAワクチンは研究段階で、マウスでは効果的であるが、人ではまだテスト中である。





2006/06/22 アルツハイマー病予防の新DNAワクチン

 アルツハイマー病の原因タンパク質・β-アミロイドが脳に蓄積するのを抑える新しいDNAワクチン(nonviral
Aβ DNA vaccine)を開発したと東京都神経科学総合研究所などの国際研究チームが発表した。

 アルツハイマー病は、脳にβ-アミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積して起こる。β-アミロイドをつくるDNAを含んだワクチンを筋肉に注射するとβ-アミロイドが体内で作られるが、同時に、β-アミロイドに対する抗体もできる。この抗体がβ-アミロイドの蓄積を抑える。

 そこで、研究チームは、開発したDNAワクチンをアルツハイマー病モデルマウスに投与してβ-アミロイドの蓄積を調べたところ、投与しなかったマウスに比べて3分の1~半分程度に減った。また、このワクチンは長期間投与しても、免疫に関する細胞の過剰な活性化や髄膜脳炎といった副作用がなく安全性が高いことから遺伝子を用いた治療薬としての可能性が期待されている。



【文献】

Okura, Y. et al.: Nonviral Aβ DNA vaccine therapy against Alzheimer's disease: Long-term effects and safety. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103: 9619-9624. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0600966103]





2006/06/20 女性の場合、睡眠不足が体重増と関連

 睡眠不足は体重の増加につながるとアメリカ胸部学会国際会議(American Thoracic Society International Conference, in San Diego)で報告されたとCBSなどが伝えている(06/05/23)。

 Nurses Health Studyに参加した女性6万8,183人を16年間追跡した結果、睡眠時間が5時間以下の女性は、7時間の女性に比べ、2.3ポンド以上(約1kg)体重が増加していた。また、睡眠時間が6時間の女性は、7時間睡眠の女性よりも1.5ポンド以上(約0.7kg)体重が重かった。

 さらに、毎日7時間以上睡眠をとる女性は5時間しかとらない女性よりも食事量が多く、運動の習慣は、両グループの間にほとんど差がみられなかった。

 以上の調査結果は、睡眠不足は体重の増加につながることを示唆しているが、その因果関係はまだ明らかではない。



 男性については調査が行われていないので睡眠不足が体重増につながるかどうか明かではない。





2006/6/19 肝臓から脳に信号が伝わり肥満を抑制

 肝臓と脂肪組織の情報のやりとりに関与する神経経路を同定したと東北大の研究グループが科学研究雑誌Scienceに発表した。

 モデルマウスに対し遺伝子操作を行い、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)-γ2を肝臓に発現させると、脂肪の蓄積が著しく減少した。また、迷走神経を手術で切断して実験すると、脂肪肝にしても内臓脂肪は減らなかった。

 以上のことから、脂肪肝になると神経を通して肝臓から脳に信号が伝わり、体のエネルギー消費を増やしたり、脂肪を減らしたりして、肥満が進むのを抑える調節機構が働くと研究者らは考えている。



【文献】

Uno, K. et al.: Neuronal Pathway from the Liver Modulates Energy Expenditure and Systemic Insulin Sensitivity. Science 312: 1656-1659. (2006) [doi 10.1126/science.1126010]





2006/06/16 ガン化を促進タンパク質が特定される

 大腸ガンの進行や悪性化で中心的な役割を果たすタンパク質が特定されたと、金沢大などの国際共同研究チームが発表した。

 CRD-BP(coding region determinant-binding protein)と呼ばれるタンパク質は、大腸ガンの細胞内で、ガン進行や悪性化につながるタンパク質を合成するリボ核酸(RNA)を安定化し、ガン化を促進することが分かった。

 大腸ガン細胞の培養実験では、遺伝子操作によりCRD-BPの働きを阻害すると、ガン化を促進する伝達経路が衰え、ガン細胞の自殺率(アポトーシス)が上昇し、増殖率が大幅に抑えられた。

 大腸ガンを促進する仕組みについては、これまで不明な部分が多かったが、大腸ガンの病巣から多く検出されるCRD-BPが、ガン化促進するタンパク質であることを解明した。 

 今後、発ガンとガン悪性化の伝達経路の解明や新たな治療、診断法の開発が期待される。



【文献】

Noubissi, F. K. et al.: CRD-BP mediates stabilization of βTrCP1 and c-myc mRNA in response to β-catenin signalling. Nature 441, 898-901 (2006) [doi: 10.1038/nature04839]





2006/06/15 ガンなどの闘病記:ネットで無料検索

 図書館司書や医療従事者が選書した700冊の闘病記を無料で検索できる「闘病記ライブラリー」(国立情報学研究所)がスタートした。仮想本棚に闘病記がガン、脳、心、血液など12項目に大分類し、病名ごとに小分類されている。

 著者、出版社、目次、概略や解説もあり、著者の性別や年齢、生死などの情報が記載されている。サブタイトルは「病気と闘う患者・家族・患者を支える人へ」である。



闘病記ライブラリーは、下記のサイトにある。
http://toubyoki.info/





2006/06/09 低カロリー食で老化を抑制できる

 十分にタンパク質と微量成分が含まれていて低カロリー(1800kcal)な食事を続ければ老化が抑制できるとアメリカ・セントルイスのワシントン大学医学部の研究グループが科学研究雑誌に報告した。

 低カロリー食を続けるとT3と呼ばれる甲状腺ホルモンと炎症性たんぱく質腫瘍壊死因子(TNF-α)のレベルが低下した。T3ホルモンは、体温、細胞代謝の制御と細胞にダメージを与えるフリーラジカルに関与していることから、T3ホルモンの減少は老化速度を遅くすると研究者らは述べている。



【文献】

Fontana, L. et al.: Effect of Long-term Calorie Restriction with Adequate Protein and Micronutrients on Thyroid Hormones. J. Clin. Endocrinol. Metab. Online May 23 (2006) [doi: 10.1210/jc.2006-0328]





2006/06/08 歩行能力は寿命と関係する

 高齢者の歩行能力が、将来の健康状態および寿命まで予測する重要な指標となることがアメリカ・ピッツバーグ大学などの調査から分かった。400メートルを短時間で歩き切ることができる人は、長生きする確率が高く、心血管疾患および身体障害を来す確率が大幅に低かった。

 健康な70~79歳の被験者3,075人(男性48%、女性52%)に対し歩行テストを行った結果、歩行速度上位25%のグループに比べ、最下位のグループでは死亡リスクが3倍高かったほか、心疾患、運動制限および障害を生じるリスクも高かった。

 この結果から著者らは、歩行テストが、高齢者の死亡リスクや疾病リスクを予測する方法として有用であり、かつ、健康状態をテストする指標として役立つとしている。



【文献】

Newman, A. B. et al.: Association of Long-Distance Corridor Walk Performance With Mortality, Cardiovascular Disease, Mobility Limitation, and Disability. JAMA. 295: 2018-2026. (2006)



 健康の維持には歩くことが大切であることを裏付けた研究である。特に、高齢者の場合、歩行能力の維持が大切であることをこの研究は示している。





2006/06/02 レモネードが腎臓結石の予防に役立つ可能性

 アメリカ・ウィスコンシン大学の研究チームとデューク大学の研究チームがアメリカ泌尿器協会年会(アトランタ:06/5/24)でレモネード(レモンジュースを水で薄めた飲み物)を飲むと腎臓結石を予防できると報告した。

 ウイスコンシン大学の研究チームは、120mlのレモンジュースを含む2.5Lの飲料か960mlのレモネードを40ヶ月飲んでもらったところ尿中のクエン酸塩が多くなり量も増えたと報告した。

 デューク大の研究チームは、低クエン酸症の患者に120mlのレモンジュースを含む2Lの飲料を摂取してもらったところ12人中11人で尿中のクエン酸塩が増加したと報告した。

 腎臓結石ができやすい人にはしばしばクエン酸カリウムが処方されるが、レモンにはクエン酸が含まれているので腎臓結石の予防に役立つと考えられている。

 しかし両グループとも、レモネード療法が代替え治療になるかについては、さらに研究を続ける必要があるとしている。





2006/06/01 鳥インフルエンザ、ヒトからヒトへの感染を否定WHO

 世界保健機関(WHO)は、インドネシアの一家7人が高病原性鳥インフルエンザに感染し、うち6人が死亡した事態について、ウイルスが人間から人間に感染した可能性があると5月23日に発表したが、その後の研究から人から人への感染は確認されていないと否定し、5月31日に見解を修正公表した。


 当初、周囲に鳥インフルエンザに感染した動物がいないとされていたが、その後の調べで数羽の鶏を飼っており、最初の病状が現れる前に3羽が死んでいることが分かった。

 以上の結果から鳥インフルエンザの警戒レベルは現状のままでよいとした。



5月31日発表の鳥インフルエンザに関するWHOの見解は下記のサイトで読める。
http://www.who.int/csr/don/2006_05_31/en/index.html

鳥インフルエンザがもし人に移ると大変なこと(世界中で多数の死者が出ると予測されている)になるが、今回は感染は確認されていないようだ。









2006/04/30 ちょっとした生活習慣の変化で寿命が延びる

 イギリスのケンブリッジ大学が25,000人以上を対象に行った研究から、果物と野菜を5単位以上摂取すると誰でも3年間寿命が延び、禁煙すると4-5年、適度な運動で3年間など、合計すると10-11歳以上も若返るとBBCが伝えている。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4941910.stm





2006/04/27 インターフェロンを作る酵素の発見
 ウイルス感染を防ぐなどの働きのあるインターフェロン-αという物質が体内で作られるのに必要な酵素を理化学研究所のチームがマウスで見つけたと科学研究雑誌Natureに発表した。

 インターフェロン-αは、ウイルスなどの異物が体内に入ると作られ、免疫力を高める作用があるため、生体の感染防ぐ働きがある。だが、免疫力を高めすぎると、副作用で関節リウマチなどの疾患が起きることが知られている。

 そこで、マウスを用いてインターフェロン-αが作られる反応を検討した結果、インターフェロン-αを強く促す酵素(IκBキナーゼ-α(IKK-α))を見つけた。従って、この酵素をうまく調節できれば、免疫を高めてがんや感染症を治療できるばかりか、免疫を抑えてリュウマチなどを治療することも期待される。


【文献】
Hoshino, K. et al.: IB kinase- is critical for interferon- production induced by Toll-like receptors 7 and 9. Nature 440: 949-953. (2006) [doi:
10.1038/nature04641]





2006/04/25 前立腺ガンの進行を止めるには

 前立腺ガンと診断された男性が、早期に、食事の内容とライフスタイルを変更したところ、1年で前立腺ガンの症状を示す値(PSA)が改善されたと報告された。

 前立腺ガンと診断されたが、まだ、転移しておらず、手術、放射線治療、化学療法などを全く受けていない93人を対象に食事、ライフスタイルを変えるグループと、従来通りの生活を続けるグループ2つに分けた。また、食事、ライフスタイルを変更したグループの食事は、果物、野菜、大豆など豆類、全粒穀物、を中心としたものに換え、さらに、フィッシュオイル、ビタミンEとCを多く摂取するようにし、1日30分間、週6日間のウオーキング、ヨガをベースにしたストレス・マネージメント(ストレッチ、呼吸法、リラクセ-ションなど)を1日1時間行った。また、週に1時間開かれる「同じ仲間の会」に参加した。

 1年後、血中の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺ガン特異抗原)を測定した結果、食事内容とライフスタイルを変更したグループのPASは、1年前より平均4%下がり、前立腺ガンの進行が抑えられていた。しかも、食事、ライフスタイル
の変化の度合いが大きかった人ほど、PSA値の下がり方が大きかった。

 一方、食事、ライフスタイルを変えなかったグループは、PAS値が1年前より6%アップしていた。


【文献】
Ornish D, et al.: Intensive lifestyle changes may affect the progression of prostate cancer. J. Urology. 174: 1065-1070. (2005)





2006/04/24 そううつ病はミトコンドリアの異常が原因
 脳内細胞のミトコンドリアの機能障害が、そううつ病を引き起こす可能性があることをマウスで確かめたと理化学研究所などの研究チームが発表した。そううつ病のモデル動物はこれまでなく、今回できたこのモデル動物を使えば病気の治療法や新薬の開発につながると期待されている。
 そううつ病は「そう」と「うつ」の精神状態が交互に繰り返される病気で、脳の細胞内でエネルギーを生み出す小器官ミトコンドリアの機能障害が原因ではないかと考えられてきた。
 そこで、ミトコンドリアの機能が正常でないマウスを人為的に作出した結果、このマウスは、不眠症や「そう」と「うつ」の気分の波などのそううつ病の症状とよく似た行動異常を示した。この結果は、ミトコンドリアがそううつ病の原因である可能性を強く示唆している。


【文献】
Kasahara, K. et al.: The rat that has peculiar accumulation to the neuron of DNA mutation of mitochondria shows the expression type like mood disorders. Mol. Psychiatry adv. online April 18 2006 [doi:
10.1038/sj.mp.4001824]





2006/04/23 細胞内の自殖作用抑制で神経変性疾患が発症
 生物が飢えると細胞が自分の一部を食べる自食作用(オートファジー)は、マウスの新生児で盛んに見られることが知られている。飢餓状態の細胞は、細胞内に含まれているたんぱく質をアミノ酸に分解し、栄養とすることで飢えをしのぐ作用がある。しかし、栄養状態が良くても日常的にもわずかだこの自食作用が起きており、その理由は分からなかった。

 水島(東京都臨床医学総合研究所)らの研究グループは、マウスの遺伝子Atg5 (autophagy-related 5)を改変し、全身で自食作用を起こらなくした(文献1)。するとマウスは、神経と肝臓の細胞に異常なたんぱく質がたくさんたまり、生後1日で死亡した。

 さらに、神経細胞だけで起こらなくすると、生後1カ月でうまく歩けなくなり、刺激に十分に反応できない運動障害がみられた。脳の神経細胞には異常なたんぱく質の塊がたまっていた。この状態は、アルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患と似ていた。
 また、田中(東京都臨床医学総合研究所)らの研究グループは、中枢神経系に関与するAtg7(autophagy-related 7)出生後28週間以内に死亡したことを確認し、水島らと同じ結論を得た(文献2)。
 以上の結果から、自殖作用(オートファジー)は、栄養状態を調節するだけでなく、神経変性(アルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病など)を防ぐ働きがあると考えられた。


【文献】
1) Hara, T. et al.: Suppression of basal autophagy in neural cells causes
neurodegenerative disease in mice. Nature online 19 April 2006
[doi:10.1038/nature04724]
2) Komatsu, M. et al.: Loss of autophagy in the central nervous system causes neurodegeneration in mice. Nature online 19 April 2006
[doi:10.1038/nature04723]





2006/04/22 脳細胞が死なない理由
 年齢とともに脳細胞は死んでゆく(アポトーシス)が、頭をよく使うと脳細胞が死なないのはなぜかが分かったと東京大学の研究チームが科学研究雑誌Cellに発表した。
 研究グループは、細胞内で物質を運ぶ役割を担うキネシン・スーパーファミリー・タンパク質4(kinesin superfamily protein 4: KIF4)に着目し、マウスなどで調べた結果、あまり使われない神経細胞では、KIF4がpoly (ADP-ribose) polymerase-1(PARP1)という酵素と結合し、細胞死が導かれることが分かった。一方、よく使う神経細胞では、細胞内にカルシウムが多く流れ込み、PARP1酵素がリン酸化するためKIF4と結合せず細胞死を免れる。
 以上のことから、神経細胞の生死の鍵はKIF4が握っているとしている。そのため、脳細胞が死ぬのを食い止めたり、神経の再生が可能になると期待されている。


【文献】
Midorikawa, R. et al.: KIF4 Motor Regulates Activity-Dependent Neuronal Survival by Suppressing PARP-1 Enzymatic Activity. Cell 125: 371-383. (2006) [doi: 10.1016/j.cell.2006.02.039]





2006/04/21 女子大生の83%がダイエット経験
 アメリカの女子大生は、太り過ぎかどうかに関係なく83%がダイエットの経験をしているとアメリカ栄養学会雑誌に報告された。また、80%は運動を試みたが目標体重を達成したのはわずか19%であった。さらに、9%が喫煙をし、32%が朝食抜きの生活をしている。


【文献】
Malinauskas, B.M. et al.: Dieting practices, weight perceptions, and body composition: A comparison of normal weight, overweight, and obese college females. Nutr. J. 5: 11. (2006) [doi: 10.1186/1475-2891-5-11]





2006/04/20 緑茶・コーヒーに糖尿病予防効果
 大阪大の磯教授らの研究グループは、全国約1万7000人の追跡調査から緑茶やコーヒーを多く飲む人は糖尿病になりにくいと発表した。
 40~65歳の男女で、糖尿病やがん、心臓病になっていなかった1万7413人を5年間調べた結果、このうち444人が糖尿病を発症した。

 緑茶の摂取量との関係では1日6杯以上飲む人は、週1杯未満の人に比べて糖尿病の発症リスクが33%減っていた。コーヒーを1日3杯以上飲む人も、週1杯未満の人に比べ42%減だった。
しかし、紅茶やウーロン茶にはこうした傾向は認められなかった。
 さらに身長と体重から肥満と判定される人でも、コーヒーや緑茶などによるカフェイン摂取量が多い人は、発症リスクが大きく減っていた。
 緑茶やコーヒーに糖尿病予防効果があるのは、糖尿病につながるインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を改善する抗酸化性物質の効果と考えられている。


【文献】
Iso, H. et al.: The relationship between green tea and total caffeine intake and risk for self-reported type 2 diabetes among Japanese adults. Ann. Intern. Med. 144: 554-62. (2006)





2006/04/19 投与薬剤の効果判定に期待
 がんは、遺伝子をつくる化学物質「塩基」の並び方に異常があると、細胞が急増して起こる。この異常は、同じ種類の塩基が連続して数個並んでいる場所でよく発生する。
 札幌医大など日欧の研究グループは、大腸がんや胃がん、子宮がんの患者計181人から摘出したがん細胞を分析した結果、約2割の40人で同じ種類の塩基が連続して並んでいる異常を発見した。さらに、試験管内で、これらのがん細胞にトリコスタチンAなど3種類の抗がん剤を加えると、がん細胞消滅など効果が表れる場合とない場合があることが分かった。
 原因を分析したところ、遺伝子の働きを抑える酵素「ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)」の構造に微妙な違いがあり、抗がん剤の効き目を左右していることが明かとなった。患者の遺伝子をあらかじめ調べてHDACの構造を分析することで、抗がん剤を投与前にその効果の有無を把握できる可能性が示唆されている。


【文献】
Ropero, S. et al,.: A truncating mutation of HDAC2 in human cancers confers resistance to histone deacetylase inhibition. Nature Genetics online 16 April 2006 [doi:10.1038/ng1773]





2006/04/15 肥満になりやすい遺伝子の発見
 太りやすさに関係しているDNAの型を新たに発見したと、アメリカ・ボストン大などの研究チームが発表した。
 研究チームはアメリカ人約700人の血液サンプルと体格データを使って、DNAの塩基が1カ所だけ置き換わっているSNP(single nucleotide polymorphism)と肥満との関係について約8万7000カ所解析した結果、遺伝子「INSIG2」の近くにSNPがある人は、そうでない人より1.3倍肥満になりやすいことが分かった。
 この遺伝子は、コレステロールなどの合成を抑制することが知られており、動物実験では肥満との関係が明かとなっている。今回見つけられたSNPが遺伝子の働きを阻害するような影響を及ぼしていると考えられている。
 また、西欧系米国人、アフリカ系米国人、子どもからなる異なった集団でもSNPと肥満との関係が確かめられた。
 危険度はそれほど大きくないものの、今回の調査では約10人に1人の割合でこの型がみられ、肥満の予防や治療法の開発につながると期待される。


【文献】
Herbert, A. et al.: A Common Genetic Variant Is Associated with Adult and Childhood Obesity. Science 312: 279-283. (2006) [DOI: 10.1126/science.1124779]





2006/04/12 食物繊維は心臓病、糖尿病に有効
 食物繊維が豊富な食事は、血中のC反応性タンパク質(CRP)を下げることが分かった。C反応性タンパク質(CRP)は、身体の炎症のマーカーで、このタンパク質が高いと将来、心臓病や糖尿病になる危険が高まる。
 健康な524人を対象に調査した結果、食物繊維を沢山摂取している人はC反応性タンパク質(CRP)の濃度が低いことが分かった。食物繊維の摂取量が最も少ないグループに比べて最も多いグループではCRPの濃度が63%低いことが分かった。
 何故、食物繊維の摂取がCRPを下げるのかはまだ分かっていないが、研究者らは、食物繊維が、コレステロールや血糖値を下げるためと推測している。
 この研究は、心臓病、糖尿病予防に果物などから食物繊維を1日当たり20-35g摂取することとする指針を支持する結果である。


【文献】
Ma, Y. et al.: Association between dietary fiber and serum C-reactive protein. Am. J. Clin. Nutr. 83: 760-766. (2006)





2006/04/10 マグネシウムでメタボリックシンドロームのリスク低下
 糖尿病や冠動脈疾患につながるメタボリックシンドロームの罹患率低下に、マグネシウムの豊富な食品が役立つことがアメリカ・ノースウェスタン大学などの研究グループが明らかにした。
 アメリカ人約4,600人を対象として1985年に開始された研究で、マグネシウム摂取量の多い人は、その後の15年間のメタボリックシンドローム発症リスクが31%低いことが分かった。
 メタボリックシンドロームの症状には、高血圧、高血糖、高脂血症のほか、「善玉」であるHDLコレステロールの低下などが含まれる。このうち3つ以上が認められると、心血管疾患および糖尿病のリスクが増大する。


【文献】
He, K., et al.: Magnesium Intake and Incidence of Metabolic Syndrome Among Young Adults. Circulation 113: 1675-1682 (2006) [doi:
10.1161/CIRCULATIONAHA.105.588327]





2006/04/09 韓国人の食物繊維の摂取量
 韓国人は、アメリカ人や日本人に比べて食物繊維をたくさん摂取していることが韓国保健福祉部の調査で分かったと韓国中央日報が伝えている(06/04/03)。、韓国人1人1日当たり平均19.8gの食物繊維を摂取しているが、この量は、アメリカ人(15.1g)や日本人(15.4g)に比べて30%ほど多い。
理由として、食物繊維が多いコメを主食としているうえ、キムチやトウガラシ、海草類などをよく食べるためとしている。しかし、韓国栄養学会の推奨量には届いていない。






2006/04/08 日本、長寿国世界一(WHO世界保健報告から)
 世界保健機関(WHO)は、2006年版の「世界保健報告」を発表した。それによると2004年の平均寿命が世界で一番長いのは日本、モナコ、サンマリノの82歳で、日本は「長寿世界一」である。男女別では日本女性が86歳で最長寿、男性は日本、アイスランド、サンマリノが79歳である。
 世界192カ国中、日本など16カ国で平均寿命が80歳以上であるのに対し、アフリカの26カ国にアフガニスタンを加えた27カ国は50歳未満だった。最も平均寿命が短いのはジンバブエの36歳である。


 WHOの寿命に関する報告は下記のサイトで読める。
 http://www.who.int/whr/2006/annex/06_annex1_en.pdf


 最も平均寿命が短かったジンバブエは、南アフリカの北に位置する国である。コレラ、サルモネラ、マラリア、赤痢など感染症の蔓延や治安の悪さなどが死亡原因である。


 外務省のジンバブエに対する海外安全情報は下記のサイトで読める。
 http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=106





2006/04/07 健康・安全を重視/農林公庫調査から
 女性の食へのこだわりは「健康・安全」が最も高く、美食や価格を上回ることが、農林漁業金融公庫の調査で分かった。食を通じた健康への取り組みでは、7割の人が「野菜や果物を多く摂取」と答えたが、「サプリメントによる栄養補助」を挙げる人も多く、健康食品への関心の高さを裏付けた。
 調査は今年2月、20歳以上の女性、2094人を対象にインターネットで行った。それによると、食に対する最も強い関心は、30%の人が「健康・安全」と答え、1位だった。次いで「美食」が19%、「安さ(経済性)」が12%と、グルメ志向や経済性より健康・安全の方に関心が高かった。
 「国産」へのこだわりは10%とそれほど高くはなかったが、それでも「簡便化」や「高級志向」を上回った。「健康・安全」志向の人は年齢層が高いほど多く、50代後半の女性では43%に上る。逆に、「美食」や「安さ(経済性)」を志向する人は若年層に多かった。「美食」に最もこだわる人は20代後半で32%に上り、「安さ(経済性)」は、30代後半で22%を占めた。


農林漁業金融公庫の「
健康に役立つ食品に関する調査」は下記のサイトにある。

http://www.afc.go.jp/your-field/investigate/
pdf/shohi-h17-02.pdf






2006/04/04 ビタミンCの老化抑制効果
 東京都老人総合研究所と東京医科歯科大大学院の研究グループは、ビタミンCが不足すると老化が進むことをマウスの実験から解明した。
 研究グループは、老化が進むと減る特定のたんぱく質(SMP30)を特定し、その性質を解析した結果、ビタミンCを合成する酵素(gluconolactonases)と同一であることが分かった。そこで、遺伝子操作でこのたんぱく質を持たないマウスを作り、正常なマウスと同時に飼育したところ、6カ月たつと、正常なマウスはすべて生きていたが、このたんぱく質を持たないマウスは半数が老衰で死んだ。死因は老衰で、4倍の速さで老化が進行したことになる。

 さらに、ビタミンCを全く含まないえさでこのマウスを飼育すると、人がビタミンCの欠乏でかかる壊血病の症状が現れて、約半年後にはすべてが死んだ。

 今回の実験から直ちに人でもビタミンCを摂取すれば老化が予防できるとはならないが、その可能性を示す有力な証拠である。


【文献】
Kondo, Y., et al.: Senescence marker protein 30 functions as gluconolactonase in L-ascorbic acid biosynthesis, and its knockout mice are prone to scurvy. Proc. Natl. Acad. Sci. 103: 5723-5728. (2006) [doi
10.1073/pnas.0511225103]





2006/04/03 内臓脂肪が神経通して食欲調節
 東北大学の研究グループは、内臓脂肪に神経を通して食欲を制御する働きがあることを動物実験で解明し、科学雑誌Cell Metabolismに発表した。
 研究グループは、食欲抑制の刺激が脂肪組織から神経を通して脳に伝わると考え、マウスの脂肪組織から脳に向かう神経を切断したところ、予想通りマウスの食欲は低下しなかった。
 内臓脂肪は、メタボリックシンドローム(高血圧、糖尿病、高脂血症をひきおこし、動脈硬化を進行させる病気)と関係することから、研究グループは、この神経伝達機構の解明により新しい治療法が開発されるとしている。


【文献】
Yamada, T., et al.: Signals from intra-abdominal fat modulate insulin and leptin sensitivity through different mechanisms: Neuronal involvement in food-intake regulation. Cell Metabolism 3: 223-229. (2006)