2006/12/22 水溶性ビタミン葉酸の吸収メカニズム
アメリカ・アルバート・アインシュタイン医科大学の研究者らは水溶性ビタミンである葉酸の吸収に係わるタンパク質(PCFT/HCP1)を発見したと発表した。
水溶性ビタミンは、小腸の脂溶性の細胞膜を簡単には通過できない。そのため、水溶性ビタミンを吸収する特別なメカニズムがあると考えられていた。
研究者らは、葉酸分子を小腸の細胞内へ輸送するPCFT/HCP1と名付けた膜タンパク質を特定した。また、PCFT/HCP1の遺伝子変異が遺伝性葉酸吸収不全症の原因となることを示した。
このタンパク質を持たない幼児は、葉酸の吸収が出来ないために遺伝性葉酸吸収不全症となることから、遺伝子診断による疾病防止に役立つと期待されている。
【文献】
Qiu, A. et al.: Identification of an Intestinal Folate Transporter and the Molecular Basis for Hereditary Folate Malabsorption. Cell 127: 917-928.
(2006)
2006/12/21 仕事で燃え尽きると、2型糖尿病リスクが上がる
イスラエル・テルアビブ大学の677人中年男性を対象とした調査によると、仕事で燃え尽きた人は2型糖尿病が発症しやすい傾向にあることが分かった。
仕事で感情的疲労、肉体的疲労、認識的な疲れなどで燃え尽き症候群になった人は2型糖尿病のリスクが1.84倍に高まることが分かった。
【文献】
Melamed, S. et al.: Burnout and Risk of Type 2 Diabetes: A Prospective Study of Apparently Healthy Employed Persons. Psychosom. Med. 68: 863-869. (2006)
2006/12/20 BMIとウエストサイズで糖尿病を予測
BMIとウエストサイズは、前-糖尿病状態でインシュリン抵抗性の人の心臓病や代謝性異常のリスクを予測出来ることをカリフォルニア・スタンフォード大学の研究グループが明らかにした。
ボランティア261人を対象に、BMI、ウエストサイズ、コレステロール、中性脂肪、インシュリンなどを測定した結果、BMIかウエストサイズを測定することで糖尿病患者の心臓病リスクを予測できると結論づけた。
【文献】
Helke, M.F. et al.: Comparison of Body Mass Index Versus Waist Circumference With the Metabolic Changes That Increase the Risk of Cardiovascular Disease in Insulin-Resistant Individuals. Amer. J. Cardiol. 98: 1053-1056. (2006)
2006/12/15 赤ワインに含まれるポリフェノールは心臓病のリスクを下げる
赤ワインの適度な消費は冠状動脈性心臓病のリスクが低いが、特に、赤ワインに含まれているポリフェノールの一種であるプロシアニジンにその活性が強いことが分かったと、イギリスの研究グループが発表した。
また、フランスの南西地方やイタリアのサルデーニャ島のワインにはこのプロアントシアニジンが多く含まれており、75歳以上の男性の比率が多く長生きする傾向にあった。
【文献】
Corder, R. et al.: Oenology: Red wine procyanidins and vascular health. Nature 444, 566. (2006) [doi: 10.1038/444566a]
2006/12/09 アメリカガン学会によるガン治療後のガイドライン
アメリカガン学会(ACS)は、科学的な証拠に基づいたガンの治療と回復期の栄養、身体的活動について専門家による評価を行い新ガイドラインを発表した。
ガンと診断されたあとの最も良い治療は、最適栄養の摂取と運動である。治療後の最適栄養は、アメリカガン学会のガン予防のための栄養摂取基準と原則的には同じである。
果物摂取は、ガンの進行に影響するビタミン、ミネラル、ファイトケミカル、食物繊維など多数の成分を含んでいるだけでなく、低カロリーで満腹感を促進する食品であることから健康的な体重維持に有効と考えられるとし、積極的な摂取を推奨している。
【文献】
Doyle, C. et al.: Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment: An American Cancer Society Guide for Informed Choices. CA Cancer J. Clin. 56: 323-353. (2006)
2006/12/08 赤味の肉は大腸ガン発症のリスクを高める
赤身の肉および加工された肉を食べる人は大腸ガン発症のリスクが高いと、スエーデン・カロリンスカ研究所のグループが発表した。
赤身の肉に関する15の研究と加工された肉に関する14の研究を調べた結果、赤身の肉を食べる人は、結腸・直腸ガン発症のリスクが28%、加工された肉を食べる人は20%上昇することが分かった。また、男性で1日当たり120グラムの赤身肉を食べる人は28%リスクが高かった。また、加工された肉を1日当たり30グラムを食べる人は9%リスクが増加した。
【文献】
Larsson, S. C. and Wolk, A.: Meat consumption and risk of colorectal cancer: A meta-analysis of prospective studies. Inter. J. Cancer. 119: 2657 - 2664. (2006)
2006/12/02 高炭水化物・低GI食で心疾患のリスクと体重の減少
高炭水化物で低グリセミック・インデックス(GI)の食事は、心疾患発症のリスクを下げ、体重も減少すると、オーストラリア・シドニー大学の研究グループが発表した。
炭水化物を55%以上摂取する高炭水化物食と、タンパク質を25%以上摂取する高タンパク質食について、炭水化物のGI値が高い時と低い時の4つの食事について、肥満または過体重のヒト129人(18~40歳)を対象に12週間調査を行った。
その結果、高炭水化物・低GI食と高タンパク質・高GI食で体重の減少が大きかった。また、BMI値が5%以上減少した人の割合は両者とも50%以上であった。
一方、心疾患発症と関係するLDL-コレステロールでは、高炭水化物・低GI食で統計的に有意に減少していた。しかし、高タンパク質・高GI食では高くなった。
以上の結果から、研究者らは、高炭水化物・低GI食は、心疾患発症を予防できるだけでなく、体重も減らせることから、体重減少に有効な高タンパク質ダイエット(アトキンス・ダイエット)の必要性はない考えている。
【文献】
McMillan-Price, J. et al.: Comparison of 4 Diets of Varying Glycemic Load on Weight Loss and Cardiovascular Risk Reduction in Overweight and Obese Young Adults: A Randomized Controlled Trial. Arch. Intern. Med. 166: 1466-1475. (2006)
2006/12/01 血液中のビタミンEレベルの高い人は死亡リスクが低い
50-60才代の喫煙男性29.092人を調査したフィンランド・ヘルシンキで行われた研究によれば、血液中のビタミンEレベルの高い人はガンや心臓病などの死亡リスクが低いことが分かった。
血液中のビタミンEレベルの高い人は、低い人に比べて死亡率が18%低くかった。また、ガンでは21%、心臓病では19%、その他の疾病では30%低かった。また、最適な血液中のビタミンEのレベルは13-14mg/lと考えられた。
ビタミンEのサプリメントの摂取では死亡率改善効果が認められていないが、研究者らは、食事からビタミンEを摂取することは有益であると結論づけている。
【文献】
Wright, M. E. et al.: Higher baseline serum concentrations of vitamin E are associated with lower total and cause-specific mortality in the Alpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Study. Amer. J. Clin. Nutr. 84: 1200-1207. (2006)
2006/11/29 心筋梗塞に血中コレステロール値は関係、卵は無関係
約9万人(男性43,319人、女性47,416人)を対象に心筋梗塞との関係を調べたところ、血液中の総コレステロール値が高いほど、心筋梗塞リスクが高くなっていた。総コレステロール値が180mg/dL未満の人に比べると240mg/dL以上の人の心筋梗塞のリスクは2倍であった。また、卵を「ほとんど毎日食べる」グループが、卵を食べる回数が少ないグループより心筋梗塞のリスクが高いわけではなかった。
以上の結果より、心筋梗塞予防には、総コレステロールを低く保つことが重要であり、卵以外の動物性脂肪などで総コレステロール値の上昇が起きると考えられる。
【文献】
Nakamura, Y. et al.: Egg consumption, serum total cholesterol concentrations and coronary heart disease incidence: Japan Public Health Center-based prospective study. Br. J. Nutr. 96: 921-928. (2006)
2006/11/28 大腸ガンのリスクは男性の方が高い
大腸ガンの原因となるポリープは、女性よりも男性に多くみられることをポーランドの研究グループが発表した。
大腸内視鏡を用いた大腸ガン検診プログラムに参加した40~66歳の被験者50,148人のデータを調べた。そのうち40~49歳の被験者は大腸ガンの家族歴がある人で、他の被験者は平均的リスクの人である。調査の結果、50~66歳では5.9%、40~49歳では3.4%に進行した大腸の病変またはポリープがみられた。また、男性では女性よりも73%多く、統計的に有意であった。
【文献】
Regula, J. et al.: Colonoscopy in Colorectal-Cancer Screening for Detection of Advanced Neoplasia. New Engl. J. Med. 355: 1863-1872. (2006)
2006/11/27 健康長寿の危険因子
ハワイに住む日系人の中年男性5,820人を40年間追跡調査したところ、冠動脈疾患、脳卒中、ガン、慢性閉塞性呼吸器疾患、パーキンソン病、糖尿病や認知機能障害、0.5マイル歩行不能な身体障害などの危険因子が6つ以上ある人の85才の生存の確率は9%であったのに対して、1つもないグループでは55%であった。
以上の結果から、中年期の危険因子を出来るだけ多く回避すれば、健康で長生きできると研究者らは述べている。
【文献】
Willcox, B. J. et al.: Midlife risk factors and healthy survival in men. J. Am. Med. Assoc. 296: 2343-2350. (2006)
2006/11/22 睡眠が不足すると体重が増加
アメリカで女性看護師68,183人を16年間追跡調査したところ、睡眠時間が5時間以下のグループでは、7時間のグループと比べて体重が1.14kg多いことが分かった。また、6時間のグループでは0.71kg多かった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと同程度であった。
16年間に15kg以上体重が増加した人の割合は、7時間のグループと比べて、5時間以下のグループでは1.28倍、6時間のグループでは1.11倍であった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと差がなかった。
以上の結果から睡眠不足は体重の増加や肥満に関連すると研究者らは述べている。
【文献】
Patel, S. R. et al.: Association between reduced sleep and weight gain in women. Am. J. Epid. 164: 947-954. (2006)
2006/11/21 丸ごとの果物は子供の体重を減らす
アメリカ・ペンシルベニア大学の研究から、丸ごとの果物の摂取が多い子供の体重は、そうでない子供と比較して減少していることが分かった。
また、今までに行われた研究では、果汁の摂取量と子供の体重増加とはリンクしていなかったが、今回の研究では、太り過ぎの傾向のある未就学児の場合、果汁の摂取は体重を増やす傾向が認められた。
ただし、この結果は果汁の摂取を止めると言うことではなく、適切な量を摂取する必要があることを意味すると研究者らは述べている。
【文献】
Faith, M. S. et al.: Fruit Juice Intake Predicts Increased Adiposity Gain in Children From Low-Income Families: Weight Status-by-Environment Interaction. Pediatrics 118: 2066-2075. (2006) [doi:10.1542/peds.2006-1117]
2006/11/20 糖尿病予防のための生活指導は、終了後も効果
フィンランドの研究によると、食事や運動に関するカウンセリングによって、2型糖尿病リスクの高い人の生活習慣を改善し、発症率を減らすことができることが明らかになった。
血糖値の高い糖尿病の予備軍に、生活習慣改善の個別指導を4年間行ったところ、終了から3年後も効果が続き、糖尿病の発生のリスクが36%下がった。
こうした結果から研究グループは、糖尿病予備軍に対する個別指導は、指導が終わってからも生活習慣の改善効果が持続し、糖尿病の発生率の低下につながると結論している。
【文献】
Lindstrom, J. et al.: Sustained reduction in the incidence of type 2 diabetes by lifestyle intervention: follow-up of the Finnish Diabetes Prevention Study. Lancet 368: 1673-1679. (2006) [DOI: 10.1016/S0140-6736(06)69701-8]
2006/11/19 世界で年間316万人の人が高血糖で死亡
高血糖は糖尿病、心疾患、脳卒中とリンクしており、世界で年間316万人が死亡していることが、アメリカ・ハーバード大学の研究から分かった。
世界各地の52カ国の血糖値のデータから最適値を超える血糖が心疾患および脳卒中による死亡に及ぼす影響を調べた。その結果、2001年に高血糖に起因する糖尿病により死亡したのは95万9,000人、同じく高血糖による心疾患および脳卒中による死亡はそれぞれ149万人、70万9,000人であった。これは、心疾患による死亡の21%、脳卒中による死亡の13%が高血糖に起因する。
高血糖による死亡数316万人は、糖尿病による死亡数を大幅に上回り、喫煙(480万人)、高コレステロール(390万人)、過体重・肥満(240万人)による死亡数に匹敵する。
そのため、研究者らは高血糖を危険因子(リスクファクター)として捉え、高血圧や高コレステロールと同じように、高血糖リスクを一般に知らせる必要性があるとしている。
【文献】
Danaei, G. et al.: Global and regional mortality from ischaemic heart disease and stroke attributable to higher-than-optimum blood glucose concentration: comparative risk assessment. Lancet 368: 1651-1659. (2006) [DOI:10.1016/S0140-6736(06)69700-6]
2006/11/16 女子学生は体重に対する意識は男子学生と大きく異なる
女子学生は男子学生よりやせる必要があると考えダイエットしているとアメリカ・ネブラスカ大学の研究チームが報告している。
研究者らは286人の大学生を調査したところ、男子学生の45.2%は、太りすぎか、肥満体であったが、女子学生は13.9%と少なかった。しかし、痩せる必要があると考えている男子学生は28.6%であったのに対し、女子学生は57.4%と、必要以上に多くが痩せたいと回答していた。
また、一度もダイエットしたことのない男子学生は79.1%であったが、女子学生は65.6%であった。男子学生も体脂肪に関心を持っているが女子学生ははるかに敏感であった。
大学生は脂肪、ナトリウムの摂取量が多く果実、野菜の摂取量が少ないなど、その食習慣は悪化の傾向がある。そのため、栄養改善の指導を行う必要があるが、男子学生と女子学生のダイエットに対する意識の違いを考慮した指導を行う必要があると研究者らは述べている。
【文献】
Davy, S. R. et al.: Sex Differences in Dieting Trends, Eating Habits, and Nutrition Beliefs of a Group of Midwestern College Students. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1673-1677. (2006)
2006/11/15 睡眠不足の子供は肥満になりやすい
イギリス・ブリストル大学の研究から睡眠不足の子供は、肥満になりやすいことが明らかにされた。
睡眠不足は正常な代謝が阻害され、ホルモンが変化し食事の摂取量が増加する。また、睡眠不足による疲労が運動不足を引き起こす可能性がある。
摂食の抑制とエネルギー代謝の活性化に強く働きかける飽食因子(抗肥満ホルモン)ホルモンのレプチンが、毎晩8時間就寝する人より5時間の人で約15%低く、逆に、空腹のシグナルとして胃から分泌されるホルモンのグレリンが8時間睡眠の人より5時間の人で約15%多い。
以上のことから、睡眠と肥満との関係は、食事や運動と同じくらい重要であるとしている。
【文献】
Taheri, S.: The link between short sleep duration and obesity: we should recommend more sleep to prevent obesity. Arch. Dis. Child. 91: 881-884. (2006) [doi: 10.1136/adc.2005.093013]
2006/11/14 サプリメントは心臓病予防に役立たない
抗酸化成分やビタミンなどのサプリメントを摂取しても心疾患や脳卒中の原因となるを予防できないとアメリカ・ジョーンズホプキンス大学の研究者らが発表した。
今までに試みられた16の臨床試験の結果を分析した結果、サプリメント(葉酸塩、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンC、β-カロテン、セレニウム)を摂取してもアテローム性動脈硬化の進行を防ぐ効果がないことが分かった。
この結果は、サプリメントに心疾患などの予防効果がないことを示しているが、食事からのビタミンなど栄養素の摂取を重要性を否定しているわけではないことに注意が必要である。
【文献】
Bleys, J. et al.: Vitamin-mineral supplementation and the progression of
atherosclerosis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am. J. Clin. Nutr. 84: 880-887 (2006)
2006/11/13 アメリカ人は減量のためのサプリメントの”誇大宣伝”を信じている
アメリカの成人は、減量のためのサプリメントを誤解していることがコネティカット大学の電話による調査から明らかになった。
調査に応じた1,444人のうち60%以上は減量のためのサプリメントは、FDAによって調査され安全で(65%)で、有効である(63%)と立証されていると誤ってい信じていた。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は減量のためのサプリメントを全く承認していないが、54%以上の人がFDAにより減量のためのサプリメントが承認されていると信じていることがわかった。
下記のサイトで調査の詳細が読める(英文)。
http://www.csra.uconn.edu/pdf/National_Dietary_Survey.pdf
2006/11/12 減量後の体重を維持すには行動計画が必要
減量した後にその体重を維持するには、リバウンドに備えて行動計画(自己規制プログラム)を立てることが重要であるとアメリカ・ブラウン大学の研究チームが発表した。
体重を減らすときには、洋服が似合うようになり、体重計の数字は下がり、周りの人が声をかけるなどがあるが、体重維持期に入るとこうしたことが少なくなり、リバウンドしやくなる。
そこで、米ブラウン大学の研究者らは、過去2年間で以前の体重より最低10%以上を減量した男女314人(平均で19.3kg(20%)減量)を対象にリバウンドに備えるための研究を行った。
被験者は3群に割り付けられ、「対照群」は、食事や運動習慣について書かれたニュースレターを年4回受けとった。「対面式対応群」は、定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングを直接受けた。「インターネット対応群」は定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングをインターネットで受けた。研究期間の18カ月後、約2.3kg以上体重が増加したのは、対照群で72%、インターネット群で55%、対面対応群では46%だった。
研究者らは、対面式対応群の成功には、毎日の体重測定だけではなく、体重報告の義務や、行動計画の必要性が関与していると述べている。
【文献】
Rena R. Wing, R. R. et al.: A Self-Regulation Program for Maintenance of Weight Loss. New Engl. J. Med. 355: 1563-1571. (2006)
2006/11/11 スウェーデンのカロリンスカ研究所の砂糖について報告
スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究グループが、ソフトドリンクなど砂糖をたくさん含む飲み物や食べ物を多く取る人は、そうでない人よりすい臓ガンを発症する危険性が最大約90%高いとする調査結果を報告した。
この発表の中ですい臓ガンのリスクを高める要因の1つとして「クリームの付いたフルーツ」とある。この料理は、スウェーデンでよく食べられている砂糖を使うスープのようなもののようであるが、まだどんな料理か分かりません。
ただ、この論文は、「Consumption of sugar and sugar-sweetened foods and the risk of pancreatic cancer in a prospective study. (Am. J. Clin. Nutr. 84:1171. 2006)」で、果物がすい臓ガンと関係していると述べているわけではなく、添加した砂糖についてのデータである。
また、研究者らが添加した砂糖がすい臓ガンのリスクを高める理由として「血糖値を調整するインスリンを分泌する膵臓のがんと、砂糖の取りすぎによる高血糖とに関連があるのかもしれない」としている。
果物は単糖類を含むが食物繊維も含まれているので、食べても血糖値を上げず、インシュリンの分泌も上げないことは科学的に明らかになっている。
一方、カリフォルニア大学の研究グループは果物の摂取はすい臓ガンのリスクを下げると報告している(Vegetable and Fruit Intake and Pancreatic Cancer in a Population-Based Case-Control Study in the San Francisco Bay Area. Cancer Epid. Biomark. Prev. 14:2093. 2005)。従って、果物がすい臓ガンのリスクを高めることはない。
2006/11/08 低GIの食事は、女性の体重増を避けられる
食物繊維を多く摂取している女性では年齢に伴う体重の増加を避けることが出来るとデンマークの研究者らが発表した。果物や野菜など食物繊維を多く含む食品のグリセミックインデックス値(GI値)は低く、キャンディや白パンなどの食品のGI値は高い。
男性185人と女性191年を対象に6年間行われた研究では、GI値の低い食事をしていた女性の体重はGI値の高い食事をしていた女性に比べて体脂肪、体重などが低いことが分かった。特に座業的な仕事が多い女性で顕著な違いが認められた。しかし、男性ではこうした傾向は認められなかった。
【文献】
Hare-Bruun, H. et al.: Glycemic index and glycemic load in relation to changes in body weight, body fat distribution, and body composition in adult Danes. Am. J. Clin. Nutr. 84: 871-879. (2006)
2006/11/06 健康情報を探索する人は、情報源をチェックしない
アメリカのインターネットユーザーの7%(1千万人)がウェブ上で健康について検索しているが、このうち、情報源と日付をチックしているのは4分の1に過ぎない。また、チックしている人のうち15%の人は、定期的に健康情報のソースと日付をチェックしているが、10%の人は時々である。
その理由として、健康ウェブサイトで情報ソースや日付を提示しているところが2%しかないためと、検索が一般的なサーチエンジンであるGoogleやYahooを使っているためとしている。
最近、医学の話題だけに焦点を当てたサーチエンジンが利用可能になったので、今後、消費者の行動が変わる可能性があると研究担当者は述べている。
上記調査は下記のサイトで読める。
http://www.pewinternet.org/PPF/r/190/report_display.asp
2006/11/05 メタボリックシンドロームでも血圧が正常なら動脈硬化のリスクは同じ
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、生活習慣病の危険を高め、心臓病や脳卒中を招く動脈硬化につながるとされている。しかし、血圧が正常であれば、メタボリックシンドロームであっても、アロテーム性動脈硬化症(心臓病や脳卒中の主因)のリスクは同じと東京大病院の石坂信和らの研究チームが報告している。
1994年-2003年に人間ドックを受診した人のうち血圧がやや高めだが正常範囲である(140Hg未満/90Hg未満)の5661人を対象に、メタボリックシンドロームの有無とアロテーム性動脈硬化症のリスクとの関係を調べた。
その結果、男女とも、同じ血圧でも降圧剤に頼っていない人の動脈硬化のリスクは、メタボリックシンドロームがあってもなくても、変わらなかった。
以上の結果から、研究者らはメタボリックシンドロームとアロテーム性動脈硬化症とは関係ないのではないかと示唆している。
【文献】
Ishizaka, N. et al.: Metabolic Syndrome May Not Associate With Carotid Plaque in Subjects With Optimal, Normal, or High-Normal Blood Pressure. Hypertension 48: 411 - 417. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000233466.24345.2e]
2006/11/04 シーバックソーン・ベリーから健康成分を高回収
グミ科のシーバックソーン・ベリーはチベットや中国、ロシアでジュースとして飲まれている。この果汁にはコレステロールを低くする成分などが含まれているが現在の製造工程では回収率が悪いことが知られていた。そこで、インドの研究グループは高圧プレスにる製造方法を開発し、パルプオイル、ジュースを効率よく回収できた。
パルプオイルにはカロテノイドが4096-4403mg/kg、トコフェロールが1409-1599mg/kgが含まれていた。また、ジュースにはポリフェノールが2392-2821mg/kg、フラボノイドが340-401mg/kg、ビタミンCが1683-1840mg/kg含まれていた。
【文献】
Arimboor, R. et al.: Integrated processing of fresh Indian sea buckthorn (Hippophae rhamnoides) berries and chemical evaluation of products. J. Sci. Food Agr. 86: 2345-2353. (2006) [doi: 10.1002/jsfa.2620]
2006/11/03 レスベラトロール摂取で高カロリー食による寿命短縮防止
脂肪分が多い高カロリー食を摂取したマウスの寿命は標準食を摂取したマウスに比べて寿命が短くなる。ところがブドウなどに含まれるポリフェノール一種である「レスベラトロール」を、高カロリー食を一緒にマウスに与えると寿命短縮を防ぐ効果があったと、アメリカ・ハーバード大などの研究チームが発表した。
体重の増加を減らす効果はあまり大きくはなかったが、血糖値やインシュリンの分泌の改善が認められ統計的に有意の寿命の伸びが認められた。マウスに与えられたレスベラトロールの量はキログラム当たり22.4mgなので、ヒト(60kg)に換算すると1.344gとなることから投与量としては多いわけではない。また、今回の論文ではデータが示されていないが5.2mg/kgでも効果があったと記載されているので、この場合をヒトに換算すると312mgとなる。
以上の結果は、哺乳動物の肥満関連の疾病に対してレスベラトロールのような低分子が効果的であることを示している。
この研究は、肥満に関連した疾病予防に対する新しいアプローチであることから今後の展開が待たれる。しかし、コレステロールや中性脂肪に変化がないなど解明すべき点も残されているので、人への応用も期待されるがまだ先だろう。
【文献】
Baur, J. A. et al.: Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature Online Nov. 1, (2006) [doi: 10.1038/nature05354]
2006/11/2 積極的な感情は低血圧につながる
メキシコ系アメリカ人2564人(65歳以上)を対象に積極的な感情と血圧との関係を調べた結果、積極的な感情をもつ人の血圧は、そうでない人と比べて統計的に有意に低いことが分かった。
【文献】
Ostir, G. V. et al.: Hypertension in Older Adults and the Role of Positive Emotions. Psych. Med. 68: 727-733. (2006)
2006/11/01 ω-3脂肪酸とアルツハイマー病との関係
ω-3脂肪酸のサプリメントを摂ることで、軽いアルツハイマー病患者の認識力低下を遅くするかもしれない。しかし、より進行した症状に対する効果についてはあまり期待できない。
スウェーデンの研究グループは、ω-3脂肪酸サプリメントと偽薬を使ってアルツハイマー病との関係を比較した。6カ月間、1.7gのドコサヘキサエン酸(DHA)と0.6グラムのエイコサペンタエン酸(EPA)を摂取した89人の患者(女51人、男38人)が1.7グと偽薬を摂取した85人の患者(女39人、男46人)を比較した。そのあとの6カ月間、両グループともω-3脂肪酸を摂取した。
2つのグループ間には、認知機能低下の速度の違いは全くなかった。しかしながら、偽薬を取った人々と比べて、非常に軽い認識的な損傷の32人の患者では、認識力の低下が遅くなった。
【文献】
Freund-Levi, Y. et al.: ω-3 Fatty Acid Treatment in 174 Patients With Mild to Moderate Alzheimer Disease: OmegAD Study. Arch. Neurol. 63: 1402-1408. (2006)
2006/10/31 地中海ダイエットはアルツハイマー病のリスクを下げる
アメリカ・ニューヨークで行われた研究によると果物、野菜、オリーブオイルと少量の肉を食べる地中海ダイエットは、アルツハイマー病のリスクが統計的に有意に減少することが分かった。
【文献】
Scarmeas, N. et al.: Mediterranean Diet, Alzheimer Disease, and Vascular Mediation. Arch. Neurol. online Oct. 9, 2006 [doi: 10.1001/archneur.63.12.noc60109]
2006/10/29 クルミはオリーブ油より心臓健康のために良い
オリーブ油は炎症版のによいことが知られていたが、24人を対象にクルミの効果について調べた結果、クルミを食べたヒトの動脈は、コレステロールが適正値になり。オリーブ油を摂取したヒトに比べて、脂肪過多の食事の後でも柔軟で弾力的なままであったという結果が報告された。
【文献】
Cirtes, B. et al.: Acute Effects of High-Fat Meals Enriched With Walnuts or Olive Oil on Postprandial Endothelial Function. J. Am. Coll. Cardiol. 48: 1666-1671. (2006) [doi: 10.1016/j.jacc.2006.06.057]
2006/10/27 魚の摂取は健康に良く、リスクは小さい
アメリカ・ハーバード大学のMozaffarianらは、過去の論文を精査し、脂肪の多い魚なら、週1~2回摂取するだけでも死亡率が17%低下し、冠動脈疾患による死亡率は36%低下すると報告した。心疾患予防には、サケを週1回、6オンス(約170g)食べるだけでも十分であると述べている。
ただし、オオサワラ、サメ、メカジキ、アマダイなど水銀含有率の高い魚は、妊婦は避けるようにとしている。
【文献】
Mozaffarian, D. et al.: Fish Intake, Contaminants, and Human Health - Evaluating the Risks and the Benefits. JAMA. 296: 1885-1899. (2006)
2006/10/24 果物と野菜の摂取は女性の胆石リスクを減らす
果物と野菜を食べている女性は、胆石形成のリスクが低いことが、77,090人の女性看護師を対象としたアメリカ・ハーバード大学の研究から明らかになった。果物と野菜の摂取量の多い人は摂取量の低い人に比べて胆石手術の必要性が21%低かった。最も多く摂取しているグループの果物と野菜の摂取量は1日あたらい7サービング以上で、最も低いグループは3サービング以下であった。
【文献】
Tsai, C-J., et al.: Fruit and Vegetable Consumption and Risk of Cholecystectomy in Women. Am. J. Med. 119: 760-767. (2006) [doi:10.1016/j.amjmed.2006.02.040]
2006/10/23 睡眠時間が短い人に肥満が多い
睡眠時間の長短が体重に影響することがアメリカ・アイオワ州で行われたの疫学研究(1999年-2004年)から明らかになった。990人を調査した結果、睡眠時間とBMI値は逆相関が認められた。睡眠時間が6時間以下の人のBMI値は30.24だったのに対して9時間以上睡眠を取った人のBMI値は28.25であった。
以上の結果から研究者らは、睡眠時間中に起きる穏やかな変化が体重のコントロールと関係している述べている。
【文献】
Kohatsu, N. D. et al.: Sleep Duration and Body Mass Index in a Rural Population. Arch. Intern. Med. 166: 1701-1705. (2006)
2006/10/21 世界的な減塩キャンペーン始まる
48カ国194人の医療専門家により世界的な減塩キャンペーンが開始された(World Action on Salt and Health (WASH) )。高血圧は脳卒中の62%、心臓病の49%の原因となっている(文献1)。世界では、脳卒中と心臓病で1270万人が死亡しており、他の疾病よりも死亡率が高い(文献2)。また、摂取する食塩を6gまで減少させると脳卒中で24%、心臓病で18%死亡率を下げることが出来ると示唆されている(文献3)。そのため、高血圧予防の観点からWHOでは1日当たりの食塩摂取量を5g以下にすることを目標としている。
World Action on Salt and Health (WASH) のホームページは下記にある。
http://www.worldactiononsalt.com/index.htm
イギリス政府のFood Standards Agencyによる「Salt - eat no more than 6 g a day」キャンペーンは下記のサイトで読める。
http://www.salt.gov.uk/index.shtml
【文献】
1) World Health Organisation: World Health Report 2002: Reducing Risks, Promoting Healthy Life. World Health Organisation (2002) www.who.int/whr/2002
2) World Health Organisation: The Atlas of Heart Disease and Stroke. Sep.
27, (2006)
http://www.who.int/cardiovascular_diseases/en/cvd_atlas_01_types.pdf.
3) He, F. J. & MacGregor, G. A.: How far should salt intake be reduced? Hypertension. 42: 1093-1099. (2003)
2006/10/20 フラボノイドの一種「フィセチン」に記憶力向上効果
野菜や果物に広く含まれるフラボノイドの一種「フィセチン(fisetin)」を摂取すると、記憶力が向上することを、武蔵野大と米ソーク研究所の共同チームが発表した。
ラットから記憶をつかさどる海馬を取り出して生きた状態に保ち、フィセチンの水溶液を細胞にかけると、長期増強を担う分子が活性化した。そこで、マウスを使って実験を行った。2個の物体を健康なマウスに記憶させ、24時間後、2個のうち1個を別のものに替えて再び見せる。前日、物体を見せる前にフィセチンの水溶液を飲ませたマウスは、替えた物体にだけ興味を示した。しかし、この水溶液を飲まなかったマウスは、どちらの物体にも均一に興味を示し、前日に見たことを忘れていた。
このことから、著者らは、フィセチンが脳の海馬に達し、記憶力向上物質として働いたと考えられると結論づけている。
【文献】
Pamela Maher, P. et al.: Flavonoid fisetin promotes ERK-dependent long-term potentiation and enhances memory. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. online Oct. 18, (2006) [doi: 10.1073/pnas.0607822103]
2006/10/18 睡眠不足は肥満、高血圧、心不全などと関連
アメリカ国立補完・代替医療センター(NCCAM)の研究チームは成人3万1,044人を対象とした健康調査データから不眠症や睡眠障害と肥満、高血圧、心不全、不安障害、うつ病との関連性が認められたと発表した。これまで不眠症は単独の疾患とみなされていたが、不眠症患者で他の疾患を有していなかったのはわすか4%であった。
睡眠の質と心身の健康との間に強い関連性を認めるエビデンス(証拠)が増えているがこの報告もその1つである。
【文献】
Nahin, R. L. et al.: Insomnia, Trouble Sleeping, and Complementary and Alternative Medicine: Analysis of the 2002 National Health Interview Survey Data. Arch. Intern. Med. 166: 1775-1782. (2006)
2006/10/17 果物・野菜の摂取は摂取カロリーや体重を減らす
今までの研究によるとエネルギー密度(Kcal/g)の低い食品(果物や野菜)は、摂取カロリーを下げると示唆しているが、体重との関係は明かではなかった。そこで、アメリカに住む7,356人を対象に摂取カロリーや体重と摂取している食品との関係を調査した。
その結果、低エネルギー密度の食品を摂取している人は、高エネルギー密度の食品(脂肪)を摂取している人より、摂取カロリーが1日当たり男性で425kcal、女性で275kcal低いことが分かった。ところが、低エネルギー密度の食品を摂取している人の1日当たりの食品の摂取重量は、男性で400g、女性で300g多かった。また、標準体重の人は肥満の人に比べて低エネルギー密度の食品(果物と野菜)を多く摂取していた。
以上のことから、研究者らは果物と野菜の摂取は体重のコントロールに重要な働きをしていると述べている。
【文献】
Ledikwe, J. H. et al.: Dietary energy density is associated with energy intake and weight status in US adults. Am. J. Clin. Nutr. 83: 1362-1368. (2006)
2006/10/11 フルーツジュースの飲用と体重とは関連しない
アメリカ・疾病管理予防センター(CDC)が就学前の子供を調査した結果、100%フルーツジュースを飲むことと過体重との関連性は見られなかったと発表した。
就学前の子供〈2-5歳)1572人を対象に1999?2002 年の間調査を行った結果、子供たちは100%ジュースを1日当たり4.70 oz 飲用していた。そこで、100%フルーツジュースと小児用BMI判定基準を用いた体重との関係を調べたところ、統計的な関連性は見られなかった。
【文献】
O'Connor, T. M. et al.: Beverage Intake Among Preschool Children and Its Effect on Weight Status. Pediatrics 118: e1010-e1018. (2006) [doi: 10.1542/peds.2005-2348]
2006/10/10 果物摂取は男性の口腔ガン発症のリスクを下げる
アメリカ・ハーバード大学の研究チームが行った調査によれば、果物(ビタミンCを多く含む果実、カンキツ果実、カンキツジュースなど)の摂取量が多い男性は、口腔ガン発生のリスクが統計的に有意に低いことが分かった。
男性42,311人を対象に1986年から2002年の間、4年ごとに調査を行った結果、果物を多く摂取している人は、摂取量が少ない人に比べて30-40%口腔ガン発症のリスクが少なかった。
【文献】
Maserejian, N. N. et al.: Prospective Study of Fruits and Vegetables and
Risk of Oral Premalignant Lesions in Men. Amer. J. Epidem. 164: 556-566.
(2006) [doi: 10.1093/aje/kwj233]
2006/10/09 果物と野菜の摂取は中性脂肪を減らす
インドで行われた研究によると、果物(107.3g/日)と野菜(緑色の葉菜34.4/日、根・塊茎93.7/日、他の野菜193.6/日)の摂取は血清中の中性脂肪と負の相関があった(p<0.05)。一方、 ミルクの摂取は、血清中の中性脂肪(p<0.01)、LDL-C(p<0.05)、血糖レベル(p<0.1)と正の相関があった。また、飽和脂肪酸の摂取は、血清中のLDL-C(p<0.05)、中性脂肪(p<0.05)と正の相関があった。
【文献】
Bains, K. et al.: Food and nutrient intake in relation to cardiovascular disease among rural males of Punjab, India. Asia Pac. J. Clin. Nutr. 13(Suppl): S95. (2004)
2006/10/08 糖尿病は肥満より死亡リスクが高い
アメリカで行われた15,408人(44-66歳)を対象とした調査から、太っているか否かにかかわらず糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して死亡リスクが3倍高いことが分かった。一方、糖尿病に罹患していない肥満の人の死亡リスクは非肥満者と変わらなかった。
この結果は、糖尿病の死亡リスクが高いことと、肥満、糖尿病、疾病の関係は複雑であることを示している。そのため、研究者らは、肥満と疾病との関係についてさらなる研究が必要と述べている。
この研究で注目されるところは、糖尿病でない肥満の人の死亡リスクが、非肥満者と変わらないとしている点で、従来の予測と一致しない。生活習慣病に係わる血圧、コレステロールなどの危険因子が正常であれば、単純な肥満は死亡リスクにつながらないことを示しているのかも知れない。
【文献】
Slynkova, K. et al.: The role of body mass index and diabetes in the development of acute organ failure and subsequent mortality in an observational cohort. Critical Care 10: R137 (2006) [doi: 10.1186/cc5051]
上記論文は下記のサイトに公開されており全文を読める。
http://ccforum.com/content/10/5/R137
2006/10/07 女性のための骨粗しょう性骨折リスク判定の予測式
オーストラリア・メルボルン大学の研究チームは、女性の骨粗鬆症性の骨折を予測する式を開発したと発表した。開発された予測式は骨密度だけでなく、様々な危険因子を考慮して作られており、この予測式を用いて2年以内に起こる骨折リスクを75%予測できた。
予測式を用いてヒップ、背骨、上腕、前腕に障害のある231人の年配の女性と、障害のない448人の年配女性に対して調査を行った結果、2年以内の骨折を75%予測できた。
以上のことから、この予測式は、骨粗しょう症の女性の治療に役立つと、研究者ら述べている。
【文献】
Henry, M. J. et al.: Fracture Risk (FRISK) Score: Geelong Osteoporosis
Study. Radiology 241: 190-196. (2006) [doi: 10.1148/radiol.2411051290]
2006/10/02 糖尿病患者はガン罹患リスクが高い
糖尿病患者はガンの罹患リスクが高いと考えられてきたが、その証拠はほとんどなかった。そこで、日本人97,771人(男性46,548人、女性51,223人:40-59歳)を対象に調査を行った結果、男性の糖尿病患者では、非糖尿病の人に比べてガン罹患リスクが27%高かった。特に、肝臓ガン、すい臓ガン、腎臓ガンの発症が多く見られた。
女性の糖尿病患者は、男性ほど高くなかったが、非糖尿病の人に比べてリスクが21%高く、胃ガン、腎臓ガン、卵巣ガンが多かった。
糖尿病患者にガンの発生が多い理由として、ガン細胞の成長を促進するインシュリンが多いためにガンの発症が多くなった可能性と、糖尿病患者に肥満が多いためガンの発症が多くなった可能性が考えられるとし、今後の検討が必要としている。
【文献】
Inoue, M., et al.: Diabetes Mellitus and the Risk of Cancer - Results From a Large-Scale Population-Based Cohort Study in Japan. Arch. Intern. Med. 166: 1871-1877. (2006)